報告書やビジネス文書など実社会で使う文章は「事実のみで構成される」スタイルがあるが、こうした文章に学生は不慣れだ。北海道文教大外国語学部の矢部玲子専任講師は講義で、新聞を教材に実用文の表現を指導している。実践編の一つが「報道文を書く」だ。

やってみよう

 《1》北海道新聞のプリント記事を読み、その一文一文について「事実か、(筆者の)意見か」を区別し、余白に書き出す
 《2》一般的な記事でかぎかっこ内の言葉は「(筆者の)意見」と考えがちだが、それは取材相手からの引用ということを確認する。「事実だけで構成される文章」の型を意識する
 《3》自分の身近な事象について客観的な視点で「報道文」として文章化する。自分のことを三人称で書き、「思った」「ではないだろうか」などの感想は避ける

実行中

客観的な視点で身近な「事件」を報道文のスタイルで書く学生

客観的な視点で身近な「事件」を報道文のスタイルで書く学生

 今回の講義は昨年11月19日に行われた。2019年度後期(選択1単位、10~1月で全15回)のうちの1回。1~4年の12人が在籍する。新聞記事中にかぎかっこがあると「これは意見だ」と間違えて分類する人もおり、事実と意見をあまり意識しないでいたことに気づいたようだ。
 筆者の思いを伝える社説やコラムなど特定のコーナーを別にすると、事件や事故などを報道する一般記事は「事実のみ」で構成されていることを確認した。続いて学生たちは自分で考えたテーマごとに報道文を書こうと400字詰め原稿用紙1枚に向かった。
 テーマは「インフルエンザの予防接種をしない理由」「マンション屋上で火事」「話題の映画公開」と多彩。客観的に書くこつをつかんでいる学生がすらすらと書き進めるのに対し、三人称形式のイメージ化ができず「どう書けばいいのか」と悩む姿も見られた。

やってみて

当初は戸惑いもあったが、自身を三人称にして学生たちが書き上げた報道文

当初は戸惑いもあったが、自身を三人称にして学生たちが書き上げた報道文

 渡辺裕貴さん(3年)
 高校時代の国語の授業で一度こうした書き方を経験した。愛猫ががんで死んだときのことを書いたが、これはむしろ「感想を書け」と言われたら、つらかったと思う。第三者の目になったからこそ、このテーマは書くことができた。

 桜井せせりさん(1年)
 報道文というものを初めて書いた。この先、社会に出てからは報告書など事実しか書かない文章が必要だと感じた。小中学生のころ新聞を時々読み、事実しか書いていないんだと何となく思っていたのが、これでちゃんと理解できた。

ひとこと

 矢部講師は「日本の国語教育は気持ちや心を重視している。それは重要ではあるが、一方で事実だけを書く文章をあまり教えていない」と話す。別の日の授業では、新聞の読者投稿欄への投稿文を書く実習も行い、そこでは「事実と意見を書き分ける」ことを経験させた。いずれも、事実を事実として明確に書き記す重要性を伝える授業だ。(渡辺多美江)