新聞を活用した授業公開や実践報告を通してNIE活動を推進する、北海道NIE推進協議会(道内の新聞・通信13社加盟)主催のセミナーが2019年度の全日程を終えた。本年度は地区セミナー9カ所のほか、全道規模の北海道セミナーを帯広で開いた。計10回は18年度と同じ。北海道セミナーは「全国新聞教育研究大会北海道十勝・帯広大会」(全国新聞教育研究協議会など主催)を兼ねた。本年度のセミナーを推進協議会の菊池安吉会長(62)=旭川市立東光中教諭=と兼間昌智副会長(58)=札幌市立もみじ台中校長=に公開授業を中心に振り返ってもらった。

2019年度NIEセミナーで行われた公開授業

 


*菊池安吉・推進協議会会長*「生きる力」育てる実践

菊池安吉・推進協議会会長 20年度から順次実施される学習指導要領には、授業に新聞を一層活用することが明記された。本年度のセミナーでは新聞を使って「生きる力」を育てることにつながる実践が多く展開された。
 北海道教育大付属釧路中では、東日本大震災の教訓をテーマに社会科の授業が公開された。新聞記事から震災の知識だけではなく、被災者の思いを知るとともに、未来に備えて自分たちができることは何だろうと考えることで、防災教育にもつながる実践だった。
 岩見沢市立中央小でのテーマは、「対話を大切に、プロに学ぶ新聞作り」。まとめ新聞作りの指導に際し、記事の書き方や見出しのポイントについて学んだ。自分たちが書いた地域の産業遺産についての原稿に、グループごとに見出しを考えることで、対話の必要性にも指導が及んだ。
 北海道セミナーを兼ねた帯広での全国新聞教育研究大会では、授業を通して子どもの発達段階に合わせた新聞活用の重要性が再確認された。小学6年の「食」の課題を考える授業では、18年の胆振東部地震による酪農被害を伝えた記事を通して、身近に起きた出来事と生活をつなげることができた。
 苫小牧市立ウトナイ中では、パラリンピックについて2紙の社説の内容や文章構成を比較した。生徒は記事中のデータの選び方や主張の違いに着目。グループでの話し合いでは、「社説はデータなどの事実と意見を効果的に織り交ぜている」など読み手を納得させるための工夫を学んだ。
 網走南ケ丘高では、3年生が最近話題になったニュースについて調べるため、新聞記事を基にインターネットなども利用して深掘りした。吉野彰さんのノーベル賞受賞決定や日本初のラグビーW杯開催などについて、意義や歴史も踏まえてグループごとにまとめ、互いに発表し合った。
 函館市立八幡小では、3年道徳の授業が公開された。元プロ野球選手の桑田真澄さんの中学、高校時代を振り返った記事などを使った。「夢をかなえるためにどんな努力をしたか」と問いかけ、児童からは「つらいことがあっても諦めない」などの考えが発表された。
 旭川市立末広北小では、「わたしたちの生活と政治」をテーマに授業が公開された。児童は消費増税で値上がりした外食価格などを紹介する新聞の記事や表、グラフを使い、国民、議員、内閣と三つのグループに分かれ、それぞれの立場で発表。主権者教育につながる実践だった。


*兼間昌智・推進協議会副会長*対話的な学び 具体化

兼間昌智・推進協議会副会長 新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」を目指す。本年度は、それを具体化する公開授業や実践発表が数多く見られた。また、どのセミナーでも授業後の話し合いで活発な意見交換が行われていた。
 室蘭市立白蘭小では、道新こども新聞「週刊まなぶん」を活用した。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に関する記事を児童に読ませた後、意見交換した。その中で、新聞記事がどのような視点や根拠で書かれているかなどを真剣に話し合った。
 札幌市立月寒小では、北海道新聞に掲載された牛肉の産地偽装に関する記事から、産地などを明示したトレーサビリティー(生産流通履歴)の有効性を児童同士で議論した。また、見出しの一部を隠した記事を読ませ、記事の内容からどのような言葉が入るのかを予測させた取り組みは、記事の理解に有効だった。
 新篠津村立新篠津中では、社会科授業で「誰を村長に選ぶべき?」として、模擬投票を行った。生徒は4グループに分かれそれぞれ政党をつくり、新聞記事を参考に自分たちが考えた政策やその根拠を発表。「少子化問題」「人口減少」「財政問題」といった現在、村が抱えている課題をリアルに訴えていたのが印象的だった。