世界保健機関(WHO)が昨年5月、「ゲーム障害」を国際疾病に認定して以降、オンラインゲームなどのやり過ぎに関心が高まっている。子どもの健康を守ろうと、香川県議会はゲーム依存症を防ぐ条例案を可決し、4月から施行される見通しだ。議会事務局によると、こうした条例は国内で例がない。県内で口火を切ったのは四国新聞(高松市)のキャンペーンだ。特集号やDVDが活用されるなど学校や家庭を巻き込み、本年度の日本新聞協会賞を受賞した。(森田一志)

鳴門教育大学で開かれた公開シンポジウム。ゲーム依存をめぐり多くの意見が出た

鳴門教育大学で開かれた公開シンポジウム。ゲーム依存をめぐり多くの意見が出た

 「課金トラブル対策を盛り込むべきだ」
 インターネット・ゲーム依存症防止を目指す香川県議会の対策条例検討委員会(会長・大山一郎議長)。10日に示された条例案の素案に反対意見はなく、委員14人の一部からは、さらに厳しい修正を求める声も上がった。
 スマートフォン・ゲームの使用時間には《1》18歳未満は「平日60分、休日90分」《2》中学生までは午後9時、それ以外は同10時までとする―などが盛り込まれた。罰則規定は設けないが、学校や家庭などに対する「行動規範」となっている。
 昨年9月、超党派による議員連盟で検討委が設置。素案前文で「過剰なゲームは学力や体力の低下を招き、睡眠障害や引きこもりを引き起こす」などとあるように健康への懸念が議員提案の条例化を加速させ、2月の議会で可決される方向だ。
 隣の徳島県鳴門市で11日にあった鳴門教育大学の公開シンポジウムはいち早く素案を取り上げた。
 阪根健二・同大学院教授(日本NIE学会長)は、素案への動きを「ゲームを考える好機」と位置づけ、ほかの登壇者3人と討議した。四国新聞の報道記事で中心的な役割を担った金藤彰彦記者は、素案へのネットの敏感な反響にも触れ「ゲームのやり過ぎが問題。自制の効かない子どもに対しての学校と家庭への後押し」と議会の意図を話した。
 シンポは大学のほか、徳島、香川両県のサテライト3会場で中継され、計約100人が見守った。質疑応答では現職の教師から不登校の教え子がゲーム依存という実態も報告された。

四国新聞の特集号、子ども新聞、啓発用DVD

四国新聞の特集号、子ども新聞、啓発用DVD

 四国新聞は昨年1月以降、オンラインゲームやスマホの依存に警鐘を鳴らしてきた。小学生の依存症は「薬物より治療困難」という医師の話を載せ、教育評論家のインタビューでは「学力が急激に下がる」実情に触れた。香川県の依存症対策費の予算案計上や各学校の子どもや保護者の学習会も入念に追った。
 別刷りの特集号ではゲーム障害の定義や課金トラブルの例、ルール作りを手厚く報じ、子ども新聞は依存傾向のチェックリストも載せた。学校の視聴覚教材用に啓発用DVDも配布。いずれも家庭や学校を巻き込む教材化を目指した。
 「WHO認定と四国新聞の記事でゲーム依存対策への機運が高まった」。高松市立木太南小の南原志伸校長は話す。子ども新聞にヒントを得て昨年、家庭でゲームやスマホを週単位で控える「ノーメディアデー」を2回行った。児童の提出シートに「本を読むことがもっと好きになりました」との回答があり、手応えを感じたという。DVDを鑑賞した同紫雲中は今春、入学説明会でスマホ操作のルールを手ほどきする。
 徳島県では阪根さんが新聞やDVDを教材に小中学校で出前講座を続ける。
 一連の報道は県民に多い生活習慣病を、子どものころから防ごうというキャンペーンの延長線上にあった。同社の粂井弘之編集局長は「新聞と教育の距離が近くなった」と振り返る。

大山一郎議長

大山一郎議長

*「国にも働きかける」*大山県議会議長

 県議会の条例づくりは淡々と進みました。県議の選挙区の住民やPTAはゲーム漬けによる子どもの不登校や引きこもりなどが身近で切実な問題なのです。
 今回はWHOの疾病認定や四国新聞の記事がきっかけでしたが、私自身10年以上前から、問題にかかわっています。当時、小学生の娘が友人たちと部屋に閉じこもりテレビゲームに没頭するのに驚き「ゲーム脳」を勉強し、問題を提起してきました。今のオンラインゲームは(素案で使用90分までとしましたが)2時間が限界だと思います。
 条例案は罰則のないあくまで行動規範ですが、今後、四国・中国地方の議長会でもその意義を訴え、国にもいろいろと働きかけていきたいと考えています。