本年度のNIEセミナー振り返る(2の2)*授業改革 主体的に学ぶ*講評*北海道NIE推進協議会会長 高辻清敏*身近な素材から「なぜ」探る
掲載日:2017.02.27
本年度の各セミナーでは、2020年度から順次実施される次期学習指導要領を視野に、「主体的・対話的で深い学び」をはじめ、指導要領の趣旨を生かす授業の改革が見られた。児童・生徒の実態と授業の目的をいかに明確にして「授業力の向上と教材の充実」ができたかとの視点で、振り返ってみた。
【公開授業=表=】公開授業は児童・生徒を育てる特効薬であり、教師の力を伸ばす即効薬ともなり得る。
根室管内中標津町立俵橋小と網走市立白鳥台小は、小規模校の特性を生かした授業だった。テーマはそれぞれ、郷土の良さと野生動物との共存・共生で、答えのない課題に挑戦した。児童の生活体験や見方・考え方をうまく引き出しており、子供同士の学び合いで思考力と協働的な態度が育成されていた。
伊達小は、身近な素材から、ものづくりの工夫・良さを発見する授業。すべての学びは「なぜ」「どうして」の疑問から始まる。児童の目線で新たな発見を探る指導者の着眼点が優れていた。
道教大付属旭川中では「天皇の生前退位」を巡る記事を使って生徒の関心を高め、生徒主役の課題解決型授業ができた。「元号はどうなる?」など新たな課題が次々に出て、次の学習に生きてくるだろう。生徒の資質能力に合った教材が深い学びにつながった。
函館中部高では、生徒たちが「北方領土問題」など現実の課題を自分のこととして考え、「何ができ、何が必要か」を判断する課題解決力が身に付いていた。グループ学習では役割分担があり、コミュニケーション能力の育成に格好のトレーニングになっていた。大人社会の現実に迎合しない批判的な思考力が育成されており、グループ討論の質は高かった。
釧路東高(釧路管内釧路町)は、核廃絶や18歳選挙権、将来の医療、介護、教育などを課題に、記事を読み取り、解決に向けてグループ討議を行った。授業の目的や指導方法にオリジナリティーがあった。
【実践発表ほか】追分高(胆振管内安平町)の全校生徒による「壁新聞作り」では、個々の成功体験が学びの意識を変化させた。次の学習につながるだろう。道新のNIEコーディネーターが準備段階から関わった。学校の活性化に外部指導者の導入は有効だ。
実践発表の中では、富良野ローターアクトクラブの取り組みが地域活性化にもつながる先進的な実践として評価できる。
空知管内栗山町立栗山小の町立図書館との連携は、教科指導と社会とのつながりの優れた例。記事と関連のある本を選んでビブリオバトル(書評合戦)を行う取り組みは参考になる。
このほか、室蘭市立東明中と滝川市立明苑中のカリキュラムに位置付けた「新聞作り」は教育活動の中にしっかりと根付き、学校の伝統・文化となっていた。新聞作りは総合学習である証しを教えてくれた。

函館セミナーの公開授業でグループ討議を行う函館中部高生=2016年11月10日、函館中部高