北海道新聞の記事を使った教育教材「道新でワークシート」が5月、通算1000号を達成した。小中学生向けに2011年4月から紙面掲載で始まり、現在はNIEのホームページ(HP)で週1回、提供し続ける。作問に協力する道内の現役教員らはシート作りにどんな思いを込めているのだろうか。(森田一志)

小学校低学年向け国語のワークシート例。素材の記事は地域面の旭川・上川面から(北海道国語教育連盟作成協力)

小学校低学年向け国語のワークシート例。素材の記事は地域面の旭川・上川面から(北海道国語教育連盟作成協力)

 5月上旬、札幌市北区の中学校で2年生約40人が地理の授業を受けていた。机の上には引き出されたワークシートが配られていた。
 使用した記事「市区町村水害ハザードマップ 障害者対応わずか2・6%」(2022年1月23日朝刊1面)。
 水害ハザードマップは洪水や津波などの被害が及ぶと予想される範囲や避難場所を示した地図だ。なぜ障害者への対応が進んでいないのかを読み取っていく。
 その理由が予算不足などにあり「すべての人が使えるようになっていないんだ」と教室内で驚きの声が上がり「だめじゃん」と失望する顔もあったという。30代の社会科教諭の話だ。
 地理教科書の「自然災害に対する備え」で災害の対応を学ぶ授業で、教諭は「こういう記事の視点がないと、ハザードマップは万人が使えるものではない、と分からない」と新聞を使う意義を語る。実はワークシートはこの教諭が作問に協力し、生徒にはそのことを伏せて使い、生徒の反応、理解度などの効果も検証できた。
 「道新でワークシート」は小中の国語と社会の両科目で作られ、毎週火曜日に各教科一つずつアップされる。作問協力者らは道内在住の19人。北海道社会科教育連盟、北海道社会科教育研究会、北海道国語教育連盟のいずれかに所属する。氏名、学校名は非公表だ。
 担当者は2、3カ月に1回順番が来て、北海道新聞の教育用記事データベース(DB)「まなbell(べる)」で調べて原案を練る。ベテランが点検、目配りする。ワークシート閲覧数の合計は6万6420件(2021年度)に上る。
 今回ハザードマップを取り上げた教諭は今の2年生が来年に学ぶ公民を視野に「障がいのある人への理解」と憲法が保障する「平等権」を結びつけることを作問の前提にしていた。「新聞で持続可能な社会の目標、SDGsなどの視点を学べる。社会科の教材を見つけるのは面白い」と興味は尽きないようだ。
 北海道社会科教育連盟の白崎正委員長(札幌市八軒西小校長)は自身も若手教師の時に新聞を教材に使った。道内の震災被害と情報の蓄積、伝え方を子どもに教える際、新聞が効果的だったという。
 「新聞は毎日多くの情報を届け、読む者は多くの身近なことを自分事として感じることができる。その情報を元にワークシートの作問協力者は確かな目でテーマを選んでいる」と教材作りを評価している。

*バラエティーに富む素材

 「道新でワークシート」では、道新に掲載されたさまざまな記事が素材に使われている。
 小学生低学年向けシートは、子供たちが親しみやすいように、かわいらしい動物や美しい風景など見栄えのする写真を大きく載せたものが多い。高学年向けになると、社会問題や読み応えのある記事も増えてくる。
 中学生向けだと、さらに記事の幅は広がる。成人年齢引き下げ、若者向けのインタビュー企画「伸びゆく君へ」など中学生に身近な記事のほか、社会科公民分野の学習になる政治経済や国際問題の記事、札幌五輪招致に関する市民アンケートなどバラエティーに富む。
 時事的なテーマでは、道内在住ウクライナ人についての記事や、漫画「鬼滅の刃」ブームの記事を使ったものもあった。(小田島玲)

●「道新でワークシート」へのアクセス
 ※パソコン・スマートフォンどちらも可能。
 《1》紙面左下のQRコードでアクセスするか、「道新でワークシート」で検索。北海道新聞NIEのホームページからも入れる
 《2》ワークシート一覧から選択するか、「ワークシート検索」から校種、教科、見出しキーワードなどで絞り込むことも可能
 《3》使いたいワークシートを表示してダウンロードし、プリントアウト
 《4》アクセス数が多い「人気のワークシート」も載っているので活用を