新年度を迎えた高校では、まず1年生から新学習指導要領による授業が始まった。新要領が求める思考力などを育むための「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」の実践に向けて新聞にできる役割とは。国語や公民、情報といった教科での有効な新聞活用法について道内の現役教諭3人に寄稿してもらった。(森田一志)

公民

*北見北斗高 山崎辰也主幹教諭*価値対立を考える材料に

 NIE学習で育成が目指される能力や学習の方法は、高校公民の枠組みだけでなく小学校からの社会科学習全体で目指す社会的な見方・考え方と重なります。
 しかし先に新聞を使うことを考えると、手段である新聞を使うことがどうしても目的化してしまって、本来社会科の目的とされる「社会認識を通して市民的資質を育成する」ということが不十分になってしまう恐れがあります。「社会認識」とは学んだ概念や理論を駆使して、自分の頭でものを見たり考えたりすることで、「市民的資質」とは、多様な考え方を背景とする民主主義社会を形成していく主権者としての資質のことを指します。
 この社会科の目的を達成するには、まず教師である私がしっかりと社会科の目的を果たす授業の筋道を考えることが先決で、その中の社会認識を深める箇所で必要に応じて、新聞を用いるのが良いと思っています。4月からの「公共」では、まさに現代の「いまここ」の問題に対する考察が求められます。新聞には問題発見だけでなく、価値判断を行うに当たっても授業での活用意義があります。
 例えば、少数民族をめぐる格差の問題や、女性の労働問題、地方財政の持続可能性問題、新型コロナウイルス感染症に伴う公的扶助の問題、二酸化炭素排出に関連した環境問題など、世の中には価値対立をはらむ問題が数多く横たわっています。新聞にはこれらの問題の説明はもちろん、実際に影響を受ける当事者の声が掲載されています。
 教師である私だけの見解でなく、または特定のグループの見解でもなく、生徒が自分の頭で考える手がかりとして新聞活用が期待されるものとなります。学びの主役は教師や校外のさまざまな団体個人でなく、目の前の生徒だということ。そのために「公共」をはじめ、直接的に主権者育成に関わる高校公民の授業で新聞の果たしうる役割は大きいと言えます。

新要領*課題をディベート
 「現代社会」に代わり必修科目として「公共」が新設された。主権者教育、法律の意義、消費者の権利などについて学ぶ。日本の安全保障や国際社会などの現代の諸課題に対してディベートなども行う。従来の「倫理」「政治・経済」は「公共」の履修を終えた後の選択科目として残った。また、地歴公民は科目編成が大幅に変わり、必修科目として「地理総合」「歴史総合」が新設された。

山崎辰也主幹教諭 やまざき・たつや 昨年8月のNIE全国大会札幌大会で「アイヌ文化学習とNIE」をテーマに実践発表。2021年度の北海道教育実践表彰を受賞。深川市出身。

国語

*札幌藻岩高 古畑理絵教諭*複数紙読み比べ課題探る

 今回の学習指導要領では「情報の扱い方に関する事項」が設定されました。これにより国語で身に付けた力が社会生活の中でどう役立つのかが以前よりも重要視されていくと思います。
 例えば「現代の国語」のある教科書では「法律の改正に関わる文章」が教材として掲載されています。改正道路交通法の内容を理解し、それを報じた2種類の記事を読み比べる学習活動です。これも社会と実際に関わるための力の育成を目指したものでしょう。
 高等学校においては「問いに答える力」はもちろんのこと、「自ら意味のある問いを立てる力」の習得が重要と考えます。進学先や職業の選択でも、常に自分を分析し自分に問いかけ、目標に応じた課題を自ら設定していくことが大切だからです。
 別の「現代の国語」の教科書では、「ゲーム依存」に関する記事を題材にして、複数紙を読み比べた後にグループで問いを作り、記事を根拠に意見をまとめるという発展的な内容が掲載され、新聞記事データベースの活用も提案されています。
 このように、生徒が課題を設定して、その根拠の一つとして記事を活用するという学習活動は、「現代の国語」や「論理国語」で培った力を確認するのに有効でしょう。本校の3学年も昨年度から新聞記事データベースを導入し、教科の他に進路学習でも活用しています。
 また、古典の学習においても、記事を用いた活動は可能です。例えば、記事で故事成語が用いられている場合、その部分を伏せ字にして、文脈からあてはまる語句を考えさせるなど、短時間で実施できる活動を通して、故事成語が現代においてどんな場面で用いられているのかを確認することができます。
 今後も教科書で学んだことを生かして、他の文章を読み解くための教材として新聞記事を活用していきたいと思います。

新要領*実用的文章必須に
 以前の必修科目だった「国語総合」は「現代の国語」「言語文化」(ともに1年必修科目)に分かれた。「現代の国語」は実社会で必要な解説文や報告書など実用的・論理的な文章が対象。「言語文化」では古典から近現代までの文学をひとまとめに学ぶ。また、これまでの「現代文(A・B)」や「古典(A・B)」などは「論理国語」「古典探求」など四つの選択科目になった。

古畑理絵教諭 ふるはた・りえ 北海道NIE研究会研究副部長。昨年8月のNIE全国大会札幌大会では札幌藻岩高図書局の生徒2人とパネル討論に参加。札幌市出身。

情報

*帯広柏葉高 土田泰裕教諭*デジタルとの差異実感を

 情報科の学習指導要領が新しくなっても、以前と同じく情報やメディアの特性を理解することに変わりはありません。授業ではインターネットニュース(デジタル)と新聞(アナログ)との対比から、見出しのつけ方などの違いで情報の伝わり方が違うことについてメリット・デメリットを考察することが重要です。
 情報社会の問題解決に関しては情報の広がりを扱う際、新聞にじかに触れてデジタルとの差異を感じることが大切と思います。ネット上では閲覧者の興味や関心によって閲覧されるページはさまざまになります。
 新聞は紙面をめくることで見出しや写真などから多くの内容が目に触れる一覧性の機会があります。情報を多面的に読み解くメディアリテラシーの指導を行う場合も、新聞なら一つのテーマについて同じ日付で何社かの紙面を用意したり、1社の紙面を数日分用意することで、情報の変化を手元で確認したりすることも可能です。
 こうした授業のほか、情報の表現や情報モラルなどを学ぶ実践として2年生の関西方面の見学旅行後、班別で自主研修の成果を新聞形式で報告してきました。
 生徒たちはB4判片面1枚の新聞をパソコンを用いてデザインし印刷します。生徒ホールに掲示し在校生や教職員の目にも触れるため、どのようにすれば研修での学びや経験が伝わるか、工夫を重ねながらの作成となります。完成後の新聞を掲示すると、ほかの班の紙面とも比較し、内容を伝えるためにはどれだけ具体的かつ端的な言葉が良いのかを知ります。
 記事作成や写真撮影を通して肖像権などのモラル指導が定着したかどうかの確認も可能と考えています。これらは過去の作品や本校新聞局の紙面、一般紙を用いて行います。参考となる紙面を複数用意して一つの資料が全てではないこと、複数紙に目を通すことで情報収集の重要性や情報の吟味の実践も兼ねています。

新要領*プログラミングも
 これまでは、情報社会に参画する態度を養う「社会と情報」、情報の科学的な理解を重視した「情報の科学」で、いずれか1科目が必修だった。本年度の新1年生から、プログラミングが必須の「情報Ⅰ」が必修科目になり、さらに学びを深める選択科目として「情報Ⅱ」も新設された。1年生が対象となる2025年の大学入学共通テストから「情報」が出題科目として加わる。

土田泰裕教諭 つちだ・やすひろ 帯広柏葉高新聞局顧問9年目。北海道高文連新聞専門部十勝支部専門委員。高校では教務部長も務める。石狩管内当別町出身。