気になる記事を台紙に切り貼りし、自分の考えを書いて発表する「第4回新聞切り抜き作品コンテスト」(北海道新聞社主催)の優秀賞31点(中学生15点、高校生16点)が決まった。新型コロナウイルス感染拡大にともないステイホームで記事に向き合う時間が増えたという受賞者の声もある。優秀賞2人の作品を紹介し、創作意欲などを聞いた。(森田一志)

 昨年11月1日までに、道内の中高生から401点の応募があった。コロナ禍やSDGs(持続可能な開発目標)、東京五輪・パラリンピックなどのニュースが多かった。11月、教員らが審査して優秀賞、佳作が決まった。
 優秀賞の樋口莉乃(りの)さん(札幌市立八軒東中3年)は、国連の掲げるSDGsで社会的な性差解消を目指す「ジェンダー平等」の視点から考えを深めた。「女性の働き方変わる SDGsで」と題し、国立大学で加速する女性教員増への数値目標の解説記事をメインに取り上げた。
 一方、同じ優秀賞の塩見花乃子(かのこ)さん(北海高1年)は「クマはなぜ街にやってきたのか?」と疑問を投げかけた。昨年6月、札幌市東区内で出没し、住民4人にけがをさせ駆除されたクマを取り上げた。道内の人身被害や生息状況などにも目を配り、クマの特徴なども調べた。
 同コンテストは情報収集能力や社会に対する関心などを育むため2018年から、年1回行われている。一つのテーマに沿って複数の記事を貼り、意見や感想を記入する。対象の記事は一般紙ならいずれでも応募できるが、記事コピーは受け付けていない。
 塩見さんは「コロナ禍で登校できない期間が長く、スマホより確かな情報を求め新聞で確認することが多かった」と述べていた。

 ほかの優秀賞は次の通り。

 【中学生の部】 坂下一聖(岩見沢市立上幌向中3年)宇井琉翔(江別市立大麻東中学校3年)吉田苺花(月形町立月形中2年)村上未来(北斗市立上磯中2年)松田紗依(北斗市立上磯中2年)松本湖子(奈井江町立奈井江中3年)上葛華音(月形町立月形中2年)目黒好香(月形町立月形中3年)佐野有紀(立命館慶祥中1年)松本さくら(北斗市立上磯中2年)菊池悠斗(岩見沢市立上幌向中3年)皆月蘭(月形町立月形中2年)三森遥歌(月形町立月形中2年)川浪彰真(北斗市立上磯中3年)

 【高校生の部】 上西優羽(旭川南高3年)山田凪紗(旭川南高3年)梅田佳乃(旭川南高3年)高橋光聖(旭川南高3年)佐藤遥香(旭川南高3年)鯨井朱羽(旭川南高3年)高橋佳那(小樽潮陵高2年)髙橋幸那(札幌第一高1年)一條葉月(旭川南高3年)一條夏輝(旭川藤星高3年)石川舞(富良野高3年)小林咲月(北海高1年)宮武優茉(旭川南高3年)園夏実(旭川南高3年)三浦星輝(函館水産高1年)

*樋口莉乃さん=札幌市立八軒東中3年*性差解消への思い発信

 「女性がリーダーシップを取り、人をまとめていける社会になってほしい」
 そんな思いを込めて「女性の働き方変わる SDGsで」を応募した。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)でジェンダー(社会的な性差)平等の実現は急務だ。樋口さんは、国立大が女性教員増へ取り組む記事を使い、問題解消への思いを発信した。
 「男女雇用機会均等法」を学ぶ授業で女性が就職差別されていたことを知った。作品のまとめでは「1人1人が輝く職場をつくって」と願いを記した。
 コンテストへの応募は2回目。前回は新型コロナウイルスが拡大する中、職を失った人がいると聞き、やはり仕事をテーマに応募し佳作に選ばれている。
 将来は保育士になって仕事と子育てを両立する女性を応援したいという。その願いを胸に3月3日の公立高校入試に臨む。

*塩見花乃子さん=北海高1年*消防クラブで学び 関心

 昨年、道内各地のクマ出没記事が多かった。6月には札幌市東区でクマが4人にけがを負わせた。
 塩見さんの「クマはなぜ街にやってきたのか?」は多くの出没被害や管理などに関する記事と、自身で調べた内容をテーマごとに整理した。レイアウトにはクマが歩く姿を工夫した。
 クマとのつきあいは小学生時代からと長い。少年消防クラブの一員として地域防災を学ぶため自宅周辺での出没状況や被害を知った。クラブの年長になり「地域の一人一人がもっと意識を高めてほしい」と作品づくりを始めた。その過程で自らの考えが深化したと意識し、クマと人とがすみ分けするゾーニング(区域分け)にも理解を示す。
 「クマが来ないようごみの出し方なども自分たちが一人一人気をつけるべきでしょう」。自然豊かな北海道が大好きで住み続けたいからこそ思いは強い。

*志田淳哉アドバイザー(札幌南高教諭)*自分の主張できた作品 増加

志田淳哉さん コンテストの審査に携わった日本新聞協会NIEアドバイザーの志田淳哉さん(札幌南高教諭)に樋口さん、塩見さんの優秀賞について講評してもらった。

 樋口さんの作品は、新聞記事を選んだ理由が明確です。樋口さんは保育士を目指しており、「母親と仕事を両立している人の助け舟」となる夢を持っています。「一人一人が輝く職場」には、ジェンダー平等は欠かせません。国立大学の女性の教員や学生を増やす取り組み、研究者の採用や昇進を評価する側を男女平等にする取り組みなどを紹介した新聞記事からジェンダーの問題を捉え、定義を自分なりに調べています。新聞記事から自発的な学びに結び付けた点が素晴らしいですね。
 塩見さんの作品は「ヒグマ」を共通のテーマに数多くの新聞記事に触れています。その中から興味のある事柄を主体的に探究し、まとめています。例えば「ヒグマの特徴」「クマに遭遇した場合」などは、記事をきっかけにして自分なりに調べた成果です。記事は事件や事故を迅速かつ正確に伝えます。道は1990年以前に頭数削減のため実施していた「春クマ駆除」から、人の生活圏とクマの生息域を分ける「ゾーニング(区域分け)」に転換しました。ヒグマとの「共存」をキーワードに実践されてきたと指摘できた点が素晴らしいですね。
 応募作品全体の印象としては、複数の共通したテーマの新聞記事から感想を述べ、一貫した自分の主張ができている作品が年々多くなっています。一方で、ステレオタイプ的な結論に終始する作品も見られます。主張する場合は、思考の根拠となった出典を明確にして自分の意見と混同させないことが大切です。また、家族や学校など自分の所属する団体の立場で考察すると視野が広がります。今後は新聞記事の出典も明らかにするといいですね。

*紙面の活用法さまざま*「まわしよみ」「いっしょに」「はがき」

 記事を切り貼りする「切り抜き」以外にも、新聞を教材として活用する手法はさまざまだ。どんな力を伸ばしたいのか。そのため紙面をどうやって使うのか。学校や家庭での実践を挙げると―。
 「まわしよみ新聞」は人とのコミュニケーション能力を高めるのが狙い。個人でする切り抜き新聞とは異なり、複数人が新聞を持ち寄って行う。読んで「気になる」「おもしろい」という記事を切り取り、記事を選んだ理由をプレゼンする。皆でトップ記事を決め模造紙などに貼って最後にタイトルや日付、コメントなどを書き込む。
 参加者の自由な対話を優先するため、少なくとも2時間程度は必要だ。初心者には大阪在住の考案者、陸奥賢さんの著書「まわしよみ新聞をつくろう!」(創元社)が参考になる。
 また、「いっしょに読もう!新聞コンクール」(日本新聞協会主催)は、社会への関心を高め、表現する力を培ってもらおうと毎年実施されている。
 小中高生らが興味を持った記事を切り抜き、専用の用紙に貼る。その際、家族や友人にも同じ記事を読んでもらい一緒に話し合った内容を踏まえて自分の意見や提言を記入する。昨年は全国から6万4513点、うち道内から1278点の応募があった。
 対象は例年9月から1年間、協会加盟社の新聞記事。応募用紙の入手を含め、詳しくは日本新聞協会NIEホームページ(http://nie.jp/)へ。問い合わせは北海道NIE推進協議会事務局(北海道新聞社NIE推進センター内)(電)011・210・5802へ。
 一方、書くことを実践したいなら「はがき新聞」がある。はがきサイズと少し大きめのA5判の原稿用紙が、用途や学年別などで計13種がある。作文に苦手意識のある子どもが負担の少ない字数から始め、見出し、文章、写真などで自由にはがきを彩り、充実感を味わうことができる。
 はがき新聞は理想教育財団(東京都港区)が普及に努めており、申請があれば小中高の教諭などに提供している。問い合わせは同財団(東京都港区)(電)03・3575・4313へ。