北海道新聞の「読者の声」欄や文芸欄への投稿に取り組む高校がある。生徒が授業で書き方を学び、投稿テーマには学校生活や進路の迷い、悩みなどを自由に選ぶ。新聞を活用して文章技術を高め、書く楽しさを感じてもらうことを教師たちは狙いにしている。(森田一志)

釧路明輝高で廊下に張り出された新聞投稿のコーナー=昨年12月15日

釧路明輝高で廊下に張り出された新聞投稿のコーナー=昨年12月15日

 釧路明輝高の校舎2階にある廊下の一角「談話コーナー」。生徒用の椅子が置かれ、正面には北海道新聞全道面「読者の声」に載った生徒の作品が張り出されている。
 昨年11月9日掲載の「『好き』を仕事にしたいけど」は、2年生の沓沢希望(のぞみ)さんが書いた。将来は好きなイラストの道に進みたいが、収入面が不安定で別の進路先との選択で「迷っている」と胸の内をつづった。ほどなくして一般読者からは「最良の選択して」「興味ある仕事をしよう」と相次いで激励の投稿が同欄に掲載された。大人とちょっとした「紙面交流」の場にもなっている。
 こうした投稿文ばかりではない。「釧路・根室面」の文芸欄に掲載された短歌、俳句などは作者の生徒の作品が掲示される。
 国語科の安田耕一教諭は「休み時間や放課後に関心を持って見る生徒たちが結構います」と掲示するコーナーの手応えを語る。新聞の投稿者は「創作文芸」を学ぶ2、3年生約20人だ。総合学科の同校独自の国語選択科目で1年間履修する。
 掲示作品には目を引く吹き出しで安田教諭が寸評や心温まるメッセージを書き込む。読者の声の掲載では、級友との日常を描いた生徒作品には「ほんのりエッセー」と名付け、また優柔不断な性格を受け止めてくれる友人をテーマにした作品は「友だちって イイね」と作者の気持ちに寄り添う。
 創作文芸の履修範囲は文芸全般で幅広く、川柳に始まり俳句、短歌、詩、エッセー、小説も入る。教科書はなく年間70時間を安田教諭手作りのプリントを使って書き方を学ぶ。時には新聞の人物紹介記事や企画記事も参考にする。安田教諭は本年度から創作文芸の担当だが、読者の声ではこれまで9回掲載された。「新聞に載ることで生徒の書く動機づけが向上し、自信にもつながります」
 授業では丁寧な鉛筆文字の原稿用紙をグループ内で鑑賞し意見交換する。3年生の川村舞桜(まお)さんは「学んできて川柳の面白さが分かったし、長い文章を書くのが苦じゃなくなりました」と語る。
 同じ総合学科制の高校では旭川南高も読者の声に投稿し、本年度分で年明け直後まで5回掲載された。
 選択科目「小論文研究」の3年生2クラス約40人が副教材で書き方を学ぶ。教諭も2人態勢。進学先の看護系受験などを目標にする生徒もいて、教諭の添削を受けるという。新聞掲載はそのまま生徒個人が直接、北海道新聞にメールで投稿している。
 担当の松本和雄教諭は「自由な発想が許される欄なので本人の気持ちがそのまま出る。掲載されると周囲の反応があって本人たちの励みになります」と話す。
 北海道文教大学(恵庭)国際学部の矢部玲子准教授は、10年ほど前から実用文の講義を担当してきた。学生に新聞投稿を推奨し、本年度分だけで十数回掲載されたという。
 講義は主に1年生を対象に前期、後期15回ずつある。事実と意見を分けて実用文などの書き方を手ほどきする。「講義の最終回には学術論文のレベルに達する作品もあるんです」と効果を語る。高校では作文実習の機会は限られているといい、「新年度から国語で論説文読解などが重視される。高校の新聞投稿は実用文重視の現れでは。そうした傾向が広がっていけば」と期待する。

*「声」に投稿 釧路明輝高2年・沓沢希望さん*進路選び 気持ち後押しされた

沓沢希望さん 昨年の三者面談で、私は好きなイラストの道に進むと決めました。直前に、進路で悩む私の投書を読んだ人から「焦らず最良の選択をして」という励ましが掲載され、タイミング良く気持ちを後押しされました。その人は「30歳すぎからボイストレーニングを始めた」とも書かれており、刺激になりました。
 もともと絵を描く時に物語を考えるのが好きでした。だから「創作文芸」を授業で選択しました。小説を読むのも好きです。少しずつですが語彙(ごい)が増えてきました。感想などの文章を書いて伝えるのが楽になってきました。ただ、2年生で創作文芸を受講すると3年生では選択できません。それが残念です。