第26回NIE全国大会札幌大会(日本新聞協会主催)は8月のオンライン開催後、続けてきた全国の視聴希望者に向けたオンデマンド配信を11月末で終了した。公開授業や実践発表、特別分科会で取り上げた25プログラムについて教育現場でNIEに携わってきた3人に講評を寄せてもらった。(森田一志)

*地域性発信 意義に気付く*日本新聞協会NIEコーディネーター 関口修司さん(66)

関口修司さん 「よくぞやってくれました!」
 NIE全国大会札幌大会は、北海道NIE推進協議会などが観客を入れたリアル開催の準備を進めていただけに、オンラインは苦渋の決断だったに違いありません。しかしながら、保護者・地域を巻き込んだ全体会や、多くの分科会が計画通りに並ぶメニューを見て驚きました。
 コロナ禍で、学校の教育活動が大きく影響を受ける中、全ての収録は至難の業です。頭が下がります。
 分科会は幅広い内容に加えICT(情報通信技術)を活用する、今求められている授業実践が勢ぞろい。一般の方にも見てほしい充実の内容でした。中でも北海道の地域性を物語る「アイヌ文化学習」と「炭鉄港」の実践が目を引きました。
 「アイヌ文化学習」の山崎辰也先生(北見北斗高)の深掘りした実践は、アイヌ民族対象の奨学金の記事で課題をつかませ、アイヌ民族の経済格差について記事や統計データ、法律、写真などの多用な資料を基に、格差問題を具体的にあぶり出しました。
 また、川上知子先生(日高管内新ひだか町立三石中)の実践は、民族共生象徴空間ウポポイ(胆振管内白老町)での体験を学習新聞に表し青森の中学校とのオンライン交流を通してアイヌ文化を他地域の視点から捉え直し、発信や交流の意義に気付かせてくれました。
 「炭鉄港」の特別分科会は、会場と教室を二元中継で結びました。パネリストの炭鉄港への思いのこもった関連記事が、鹿糠昌弘先生(美唄市立美唄中)や生徒に伝わり地域活性の予兆を感じました。学ぶ前には、美唄を「なんもない」と語っていた生徒たちが、授業で「美唄らしさを大切にしたい」「守りたい」と変わる姿は、まさに形ある産業遺産の見えない価値に気付いた瞬間でした。
 一つだけ残念なことがあります。北海道の夏を体感できなかったことです。来年以降の課題となりました。

 せきぐち・しゅうじ 日本新聞協会NIEコーディネーター。東京都北区の3小学校で校長を務め、NIEを推進した。

*新聞紙面 ICTでも有用*光村図書中学校「国語」教科書編集委員 植田恭子さん(64)

植田恭子さん コロナ禍という大変な状況下「ファーストペンギン」(ベンチャー精神を持って行動する人)として、道内各地のそれぞれの持ち場で「新しい学び」を創り出し、新しい時代の羅針盤が示された大会であった。
 オンラインで、すべての配信を立ちどまり、繰り返し視聴することが可能となり、多彩な取り組みの成果からじっくり学ぶことができたと思う。特筆すべきは、コロナ禍で再認識した新聞というメディアの特性を生かして「生きる力」の育成のためにツールとして新聞を活用していることだ。
 国語科の実践では、主体的に情報と向き合う手だてがなされている。新聞の表現の工夫を自分の発信に生かしていく、自分の考えを構築していく情報源の一つとして新聞を活用していく等、魅力的な価値ある学習が進められた。「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、充実した授業が展開された。
 「学校図書館は『普段使いのNIE』を支える土台である」と地道に取り組んでこられた日常的な新聞活用は、GIGAスクール時代だからこそ重要であろう。学校図書館におけるデータベースなど、豊富な知の財産をどのように活用していくかは今後の課題の一つである。
 「GIGAスクール時代におけるNIEとICT」では、新聞の学習材としての可能性を中川一史・放送大教授が明らかにされ、ICT活用のメリットとして「3つの超―超原型・超空間・超時間」を挙げた。例えば記事のデータベースなら加工・編集でき、離れていても双方向で活用し、学習履歴の保存が可能だ。
 アナログとデジタルの間を行き来する、こうしたNIEが「新しい学び」のスタンダードになっていくだろう。オール北海道で、NIE実践の点をつなぎ、縦横に線を描いた。それを面に広げていけるよう、今大会の成果をもとに、次の一歩を踏み出していければと思う。

 うえだ・きょうこ 大阪市内の中学校教諭を経て都留文科大学非常勤講師。光村図書中学校「国語」教科書編集委員。

*探究学習 深い考察に感心*札幌光星中学校・高等学校教諭 堀由佳さん(32)

堀由佳さん 小中高の社会科関連の公開授業について述べたい。
 中里彰吾先生(札幌市立中央小)の「武士の世の中へ」は鎌倉時代の北海道やアイヌ民族と、元や幕府のかかわりについての学習でした。テーマが大きいので、地図も年表も載っているボリュームのある記事を使う必要がありました。オンデマンド配信という点では記事が画面に大きく映し出され、じっくりと記事を読むことができました。
 山田耕平先生(札幌市立真駒内中)の「北海道地方~豊かな自然を生かした観光」では、記事の選び方や扱い方に学ぶ点が多くありました。野生動物に餌を与えることを禁じる自然公園法改正案を書いた一つ目の記事は罰金を科すことの利点と欠点が両方示されていたため、生徒も賛否を考えやすかったと思います。
 自然保護と観光との両立を探る「エコツーリズム」とともに地域のあり方を考えることが主眼。他者と考えを共有することも重要な過程だと思いました。
 自ら課題を設定し解決する志田淳哉先生(札幌南高)と同僚教諭の探究活動では確かな収穫がありました。3年の班による発表は「AI(人工知能)」「ジェンダー(社会的な性差)」などテーマはさまざま。新聞記事などの資料にあたることで深い考察をする班もあり、生徒同士の質疑応答にも感心しました。
 私は収録会場で研究討議の司会を担当したのですが、探究学習を円滑に進めるための刺激も受けました。教科を問わず、多くの教員を巻き込む。教員が極力手を出さず、できるだけ生徒に時間を与えて議論させる。思い切って生徒に委ねることが成果につながっているように感じています。
 1年次の新聞学習も参考になりました。複数紙で同じテーマを扱うコラムを読ませ感想を交流させることで、多角的な視点を身につけたことも生きたようです。3年間の学びをマネジメントすることの重要性に改めて気付かされました。

 ほり・ゆか 札幌光星中学校・高等学校教諭(地歴公民科)。北海道NIE研究会事務局次長。札幌市出身。