2022年度から高校で始まる新しい「探究学習」では新学習指導要領を受け、生徒自らが課題を設定し、主体的に解決に取り組む。8月のNIE全国大会札幌大会では札幌南高が公開授業で探究学習を発表する。札南高流の事例を紹介する。(森田一志)

 5月14日。3年生300人余りが数人ずつのグループに分かれ、各教室で探究学習の発表を繰り広げた。
 「火星に住みたい」「より強固な暗号を作成するには」と遠大な夢や世界があれば、生徒の心情を調査した「札南生の恋愛観」も。失敗談で、ほかの生徒の笑いを誘う発表もあった。

*テーマを重視

東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗前会長の女性蔑視発言以降、注目を集めるジェンダー平等について話し合う札南高3年生

東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗前会長の女性蔑視発言以降、注目を集めるジェンダー平等について話し合う札南高3年生

 テーマは50超あり、この日は1年生から学んだ集大成として、模造紙で校内発表する6月のポスターセッションの「予行演習」だった。
 札南高では「問いづくり」(テーマ)と本、新聞、ネットなどによる「情報収集・作業」をグループで一緒に行い、「仮説」(解決策)の検証を繰り返す。テーマ設定が重視され、生徒が関心や興味のある分野から選び、クラス横断的なグループ編成にもつなげる。
 「テーマは、最初メンバー3人でまず決めました。話し合う仲間ができたのが一番大きな収穫」。真継(まつぐ)都さんは昨春、男女差による格差をテーマに「ジェンダー平等を実現するには」を中心になって選んだ。メンバーは6人に増え、この1年間熟議を続けた。
 唯一の男子生徒梅沢倖大(こうた)さんは「中学時代、よく女生徒に『女子力が高いね』と言っていた」と反省を交え「この1年で男女差別だと気づきました」と話す。
 発表では幼少期から結婚、子育てまでを世代別に、課題と解決策を検証した。社会人として男女間の賃金格差や育児、家事時間の男女の違いなどをグラフなどで補足説明した。医大系受験での女子受験差別には、医療機関の労働実態を記事にした週1回発行の朝日中高生新聞を参考にした。
 6人は交代でこうした検証結果を発表。真継さんは生徒の質問に対し、日常でジェンダー格差などに直面した時には「『これ何だろう』という違和感を持っていけば、(社会などと)より良い関係性を築いていけるのでは」と希望を語った。
 経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)などで日本の子どもたちは、「知識の量は豊富だが、活用は苦手」と指摘されてきた。探究学習は文科省の掲げる「主体的・対話的で深い学び」の代表例の一つとされる。

*新聞で基礎力

 札南高は3年間約100単位を1、2年で集中的に学び、授業計画で3年夏ごろまでに事実上終える。1年生から視野を広げる基礎力を身に付けようと新聞を活用した学習を設ける。現3年生は1年時には新聞5紙の新元号令和やノーベル賞についてのコラム、記事を読み感想をまとめた。小中高生の作文を掲載する北海道新聞の「ぶんぶんタイム」に投稿することも推奨された。この授業枠では大学受験向けの小論文学習や進路研究なども弾力的に行われる。
 探究学習は総合学習を段階的にリニューアルする形で始まり、札南高は公募で道教委の探究モデル校(2019~21年度)にもなっている。高校教育指導係は「報告結果をまとめ道内の参考にしたい」。8月のNIE全国大会札幌大会の公開授業には校内審査を経た札幌南高の複数のグループが参加する予定だ。
 ただ、最初から探究学習にかかわってきた教務部長の志田淳哉さん=NIEアドバイザー=は「発表が成功すればそれでよいというわけではない」とくぎを刺し「大学進学後、探究の学びを次の学びにつなげてほしい」と真の狙いを語る。大学で専門課程を学ぶ時こそ、高校で学んだ探究活動が力を発揮すると確信するからだ。
 現3年生は初めて探究学習を授業計画通り学んだ1期生。卒業後までを見据えた札幌南高の試みはこれから本格化する。