月1回、町内の小中全16校の授業で同じ新聞を使おうと「別海町 新聞の日」が設けられ3カ月余り。根室管内別海町では新聞教材が日常の教室風景に溶け込んできた。教科書を広げるように子ども全員が同じ新聞を使うことのメリットも改めて実証されている。町教委はさらに新聞の活用を効果的に後押しする方針だ。(森田一志)

生徒が同じ日の新聞を使う「新聞の日」に国語の授業を行う木村教諭

 「お気に入りの記事を紹介しよう」。国語教諭の木村直斗さん(28)が言った。
 「新聞の日」の9月28日、町立野付中学校(飯田雄士校長 40人)の授業で1年生11人は、当日の北海道新聞朝刊と2日前の道新こども新聞週刊まなぶんを読み始めた。
 海の豊かさを守ろうという本紙のSDGsの特集、飛び込みの日本選手権を扱った「14歳玉井 高得点で2冠」などの記事が生徒によって選ばれた。まなぶんの記事「新しい首相に菅さん」で紹介された菅首相の好物では「意外に甘党だった」と声が上がる。
 1年の国語教科書には文章をまとめ、相手に分かりやすく発表することを学ぶ単元がある。同一紙面の複数の記事からお気に入りを選んだ理由などを2人一組で発表し合い、相手から助言をもらう。木村さんは工夫しながら何回か人を替えて行うよう指示した。生徒たちはワークシートを使いながら「下書きをすると正確に発表できた」「ゆっくり話すとうまくいった」と感想を述べた。木村さんは「同じ新聞だと生徒がコミュニケーションを取りやすい」と手応えを語る。「新聞の日」が月の最終月曜日を中心に7月から始まり4回目になる成果だ。
 もちろん全学年が同じ日に新聞を使う。3年生の所沢(しょざわ)大輝さん(14)は記事から助詞の数を探す授業を受け「国語の力がついた気がする」。菅内閣支持率に興味を持ち、発足直後は各紙で6~7割台と幅広いことも知った。「取材する人が違うと、支持率が違うんだ」とメディアの多様性に納得した。

*登藤教育長に聞く*物事 客観視できる

 「別海町 新聞の日」を担う教育現場の反応や今後の取り組みについて、登藤(とどう)和哉教育長(62)に聞いた。(聞き手・坂本尚之)

 ――「新聞の日」の授業をどう感じていますか。

 「町内の学校を一通り見たが、面白い取り組みもあった。一人一人が気になった記事を壁に貼ったり、書き写した記事の感想を書いてコンテストのように比べたり。少しずつ浸透しているかなと感じる。NIEは先生の手間がすごく増えるということがないのもいい」

 ――スタート当初はどうでしたか。

 「20年以上前だが、『学校新聞』づくりに関心があり、教育行政に携わったことはなかったが、よく見に行った。新聞制作や読むことで、物事を客観的に見る力が付くと思っていた。今回、実施前に学校長から小学校低学年の児童にどう新聞を使えばいいのか、という問い合わせもあった。『最初は気に入った写真を切り抜いて、何の写真かを書くだけでいい』と話した。先生も不安だったんでしょう。始めてみると皆さん協力的でした」

 ――「新聞の日」実施の意義、今後の展開は。

 「これまでのように、熱心な先生が転勤したら新聞を使うことがなくなった、ということにはならない。『仕組み』として残る。既に面白い使い方が出ている。半年後、学校に『新聞活用のアイデアがあったら教えてください』などと聞き取りしたい。良い取り組みは校長会などで紹介したい」
 「町の『学びの土台づくり』事業にある、お薦め本を2人が互いに紹介し合うビブリオバトルのように、選んだ新聞記事の『ここに感動した』とかをPRし合う大会のようなものをやってみたい。『新聞版ビブリオバトル』。読解力だけでなく、表現力、語彙(ごい)力、スピーチ力も養えると思う。何年後になるか分からないが。理想です」