社説にじっくりと向き合い、自分の考えを深め伝える―。札幌光星高3年生の21人は、本年度から始まった新しい「政治経済演習」の授業を受けている。秋にも始まる大学受験の面接に備えた学習だが、担当教諭の堀由佳さんは「延長線上には主権者教育がある」と話している。(森田一志)

新聞社説をタブレット端末で読んで要旨を送信する札幌光星高生たち

新聞社説をタブレット端末で読んで要旨を送信する札幌光星高生たち

 8月28日、安倍晋三首相の突然の辞任表明は演習授業の格好の教材になった。
 翌日には7年8カ月の第2次安倍政権を総括した社説が掲載され、この日3紙を使う授業が始まった。
 「『安倍政治』の弊害清算の時」(朝日)、「行き詰まった末の幕引き」(毎日)、「危機対処へ政治空白を避けよ」(読売)と各紙のカラーがにじむ。
 生徒1人が1紙の社説を「新型コロナ対応」「経済」「安全保障」などの項目別に要約する。「アベノミクスで景気回復。現状は厳しい」と辛口評の社説もあれば「長期政権の功績大きい」と高い評価もあった。
 最長政権を振り返るため授業は計3回になり、今月16日の比較読みで終えた。生徒たちは「社説ではコロナ対策はどれも否定的」と位置付け、新聞によっては「外交や安全保障について記述が少ない」と記述した。最後には「たくさん読むことで視野が広がる」と比較読みの利点を挙げた。斎藤悠凪(ゆうな)さんは「安倍首相の景気回復策は素晴らしかったけど、コロナの対応は遅かった。今なら選挙で支持しない」と明言した。
 生徒たちは中高6年コースの私大文系希望者で演習は週2回50分ずつ。通常は堀教諭が授業の朝、その日の社説を選んで手作りしたB4判のワークシートを使う。代わりにタブレット端末に配信された社説を使うこともあり臨機応変だ。
 地域密着の「核のごみ調査 地域の分断招く交付金」(北海道、8月22日)、「コロナ禍の台風 多様な避難先の用意を」(同、9月9日)などを選ぶこともある。時には生のニュース記事を教材にもする。
 堀教諭がこだわるのは読んだ後、生徒が交流を通じ自分の考えを伝えることだ。安倍首相辞任を巡る3回の授業では生徒を何回か班分けし意見交換で関心を深めた。萩野もみさんは「今まで新聞に縁がなかったけど、電子版の新聞を時々見るようになりました」と生活の変化を話す。授業は当初今春からを想定していたが、感染予防に伴う休校で6月以降になった。
 選挙権が18歳以上に引き下げられ、主権者教育が急務だとして堀さんは「地歴公民の教師として、ものを考えられる人を育てたいという意識を職場で共有しています」。実は学生時代、ゼミ生同士で論議した時、口を閉ざし「まったくついていけなかった」苦い体験がある。その殻を破るため、自ら蓄積を課したのが原点にある。
 今回授業を見学した北海道NIE推進協議会の上村尚生コーディネーターは「高校生になれば自分の考えを相手に伝えることが求められる。今回はその時必要な『書く』『話す』『語彙(ごい)力』を新聞で学んでいた」と感想を述べた。