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北海道新聞に掲載されたNIE 関連の記事などを紹介します。

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いつでもどこでも誰でも まわしよみ新聞(2の1)

 おしゃべりをしながら新聞記事をグループで切り貼りし、壁新聞に仕上げるメディア遊びがいま人気だ。名づけて「まわしよみ新聞」。一人一人、記事を切り抜いた理由を説明するうちに、自然と盛り上がる。初対面でも、互いの考えや関心のありどころが分かるから不思議だ。発案者は「まわしよみ新聞」に関するすべての著作権を開放しており、新聞さえあれば、いつでも、どこでも、誰でもできる。九州を中心に、小中高校や大学で「出前講座」が開かれ、NIE(Newspaper In Education=教育に新聞を)の一環で学校教育に取り入れる動きが出ている。新聞に触れる初めの一歩、大阪発の新たなコミュニケーション手段を紹介する。

陸奥賢さん

まわしよみ新聞の「極意」を語る陸奥賢さん=神戸市灘区の生きがい活動ステーション

*発案した大阪の陸奥賢さん*切り抜きから弾む会話

 「まわしよみ新聞」を発案した大阪の陸奥賢(むつさとし)さん(37)に聞いた。

 2012年春、大阪市のまちづくりプロジェクトに携わっていたころ、西成区の釜ケ崎の喫茶店で、ママと客の日雇い労働者のおっちゃんが新聞の記事で盛り上がってたんですわ。懐かしいなと思いました。子どものころ、新聞は回し読むものでした。父が読んだ後、自分が読み、母と弟が読む。新聞は家庭のコミュニケーションの核でした。
 まちの人と仲よくなる道具として新聞を使ったらええと考えました。まわしよみ新聞の創刊はこの年の9月29日です。NPO法人のイベントで試作して盛り上がり、1カ月間、まちの人たちと作り続けました。形に残すため、壁新聞として貼っていきました。読者を意識したほうが作りがいがありますからね。
 まわしよみ新聞はプロジェクト全体の著作権を開放したオープンソースです。例えば、(札幌発のバーチャルアイドル)初音ミクの場合、非営利に限ってキャラクターの著作権を開放したので、インターネットのユーザーが作ったさまざまな初音ミクや曲が登場しましたよね。まわしよみ新聞はこれからの情報化社会に必要不可欠やし、社会の共有財産、共有文化にしたい。原作者のクレジットを表示することを主な条件に、(まわしよみ新聞の)改変はもちろん、営利目的の二次利用も可能です。
 新聞には多種多様な記事が載ってます。インターネットで検索するのと違って、自分の興味や関心外の記事のほうがむしろ多い。その新聞からどんな記事を切り抜くかとか、記事にどんなツッコミを入れるかによって、個々の人となり、性格が分かるんですね。会社の新人研修や学校、いろんな人が集まる場所で作ると面白いと分かりました。
 つまり、まわしよみ新聞は他者を発見する作業で、「コモンズ」(共有場)でこそ真価を発揮します。新聞とのり、はさみを片手に自分のコミュニティーを飛び出し、他者と入り会いの場であるコモンズを新たにつくるプロジェクトです。
 新聞記事を使った一種のカードゲームとも言えますね。誰も目に留めないような小さな記事で「あっ」と言わせるのが一つの見せどころなんです。テーマが決まった集会だと、対話を重ねていくと場が煮詰まってしまいますよね。その点、まわしよみ新聞はテーマのない対話の場で、どんな記事を切り抜くか、どんな話題が出るのか想定できない。切った記事は発言権カードで、参加者は発言の機会が同じ回数与えられ、参加した満足度が高いんです。
 最近、教育委員会からお声が掛かり、先生たちの研修会でまわしよみ新聞を作ったりしています。世の中には解けない問題が多い。問いに答えさせるだけの教育ではなく、子どもたちが主体的となって気づき、発見が得られる仕組みとして、まわしよみ新聞は使えるんやないでしょうか。興味があるものを使って組み立てていくのですから。
 記事を貼り合わせて壁新聞を作る時、学校のテストの問題は解けない子どもでも、イラストを描いたり、活躍できる機会があるわけです。それぞれが考え「集合知」が組み合わされて、想像できないものができる。まわしよみ新聞の醍醐味(だいごみ)やないでしょうか。

 むつ・さとし 1978年、大阪市住吉区生まれ。高校中退後、フリーター、放送作家などを経て、大阪市のまちづくりに携わる。2008~13年、まち歩きプロジェクトの大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会「大阪あそ歩」プロデューサー。協議会は12年、観光庁長官表彰を受けた。観光家、コモンズ・デザイナーと称する。

神戸のNPO法人などが運営する生きがい活動ステーションが体験講座「まわしよみ新聞のすすめ」を開き、老若男女14人が陸奥賢さんの助言のもと、思い思いの壁新聞を仕上げた。最後に全員で記念撮影=2015年11月14日、神戸市立六甲道勤労市民センター

神戸のNPO法人などが運営する生きがい活動ステーションが体験講座「まわしよみ新聞のすすめ」を開き、老若男女14人が陸奥賢さんの助言のもと、思い思いの壁新聞を仕上げた。最後に全員で記念撮影=2015年11月14日、神戸市立六甲道勤労市民センター


*ゲーム感覚 教育効果も*北海道NIE推進協議会・高辻清敏会長

高辻清敏会長

高辻清敏会長

 全国的に広がりを見せる「まわしよみ新聞」について、北海道NIE推進協議会の高辻清敏会長(76)は「新聞を使って誰でもゲーム感覚で自由な発言のチャンスが与えられ、多面的な考え方を実感できる。教育効果が高い」と指摘する。
 中学生と一緒にまわしよみ新聞を体験し、記事でも広告でも写真でも選択が自由で、切り取った記事が発言チャンスになる点に着目する。「どんな人も、自分が選んだものについては何か説明できる。ふだん発言が少ない子、知識に自信がない子も、生き生きと考えを発表していたのが印象深い」と振り返る。
 発言者は考えが尊重され、満足感が大きい。聞く側に回った時、他者の意見、異なる価値観に触れられるのがまわしよみ新聞の魅力だ。話題が自然と広がっていく過程で、自分の立ち位置を何回も確認できる。「特に、新学期、新年度のグループづくりに有効ではないか」とアドバイスする。
 「記事を読んだり他者の意見を聞いたりするうちに、記事の価値や良さが分かり、疑問点、反論など自分の考えが湧いてくる。これこそが、今の教育に求められているアクティブ・ラーニング(主体的な学習)だ」とし、「『読む・書く・話す・聞く』のすべての言語活動の力が培われる」と強調する。
 まわしよみ新聞の輪に実際に入ったことで、魅力や可能性を肌で感じられた。いま、「NIEの新たな方策の一つとして、現場の先生たちにまず体験してもらいたい」と提案する。


魚住建太さん

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札幌啓北商業高校2年
魚住建太さん(17)

意見言うことできた

 学校では意見を言わないほうで、仮に討論の機会が用意されたとしても避けていたと思います。でも、まわしよみ新聞を作る際、安保法制の記事を選んだ理由を冗舌に語っている自分がいました。自分の主張を他人に話すのは初めてです。一つ成長することができました

 

 

 


安本茂夫さん
まわしよみ新聞

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尺八教授
安本茂夫さん(78)
=神戸市東灘区=

世代超えて楽しめた

 女子高生から78歳の私までの5人がテレビのやらせ問題の記事をめぐって話題沸騰となりました。世代を超えて楽しめます。私は17年前に載ったベストセラーの記事の切り抜きを持参しました。でも、記事はまわしよみ新聞を作る時に切り抜くのが基本なんですね(笑)。地域でさっそく実践しています

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