粘土には苦い思い出がある。小学校中学年の頃、図工の授業でよく粘土を扱っていた。僕は器用な方ではなかったが、粘土細工だけは腕に覚えがあった。細かい手さばきでかわいいクマさんなどを作った。
 ある終業日、教室には長期休暇を心待ちにする子どもたちの声が飛び交っていた。年配の担任は教室後ろの棚を黙々と整理し、置きっ放しの教材などを持ち帰るよう促した。中には無記名のものもあったので、担任は教壇に立ち、持ち主探しを始めた。順を追い、持ち主を探す中、次に掲げられたのは見覚えのある粘土箱だった。そう、僕の粘土箱だ。不覚にも名を記し忘れていた。
 僕のだと手を挙げようとしたその時、担任はおもむろに箱のふたを開け、中からかわいいクマさんの粘土細工を取り出し、こう言った。「こんなにかわいらしいクマを作るってことは女子だな」。僕は恥ずかしくなり、そっと手を下げた。