関東に住んでいた頃、私は駅前である男性と出会った。その人は自分で考えた言葉を書いた色紙をブルーシートの上に置いて、客の言い値で売っていた。最初「気持ち悪い」と思った。
 しかしよく見ると、良い言葉を書いている。色紙の左隅に、自分で作ったハンコで「コト」と押されていた。見た限りで売れ行きは悪そうである。人助けのつもりで一つ買おうと話しかけた時、あることに気づいた。彼には片足がないのだ。「人助け」なんて、何て自分は上からの目線で考えていたのか、と思った。
 彼と仲良くなった頃、釧路の実家に戻ることになった。別れる前にコトさんから色紙2枚をもらった。一つには「一期一会」、もう一つには私を励ます言葉と「出逢(あ)ってくれてありがとう」と書かれていた。
 元気がなくなった時、それを読み返し、また元気になる。コトさんに「ありがとう」と言いたい。