私の家は飲食店を経営しています。昔、店で使う卵を買っていた養鶏場へ連れて行ってもらったことがあります。
 飼育場へ入ると、そこは基本的に放し飼いをしていたので、きれいな白い羽をまとったニワトリたちが、木製の小屋を出入りしてました。私が行った時にはちょうど、ヒヨコが卵からかえった時だったのでしょう。小さくてふわふわしたヒヨコたちが、おぼつかない足取りで歩いていました。しかし、私が行ったのは養鶏場なのですから、当然、卵からかえることもなく売られていった「ヒヨコ」もいたのでしょう。もとい、卵として。
 私の食卓にはよく卵を使った料理が出ます。しかし、その卵は成鳥はおろか、ヒヨコにさえなれなかったたくさんの命のかたまりなのでしょう。ヒヨコになれる確率はとても低く、自ら選ぶこともできません。だから、私は「いただきます」と言うのです。