食べるって幸せだ。ふとした時に思う。あくまで食べるとは生命維持や自分の欲求を満たす行為にしかすぎない。だけど、それでもいい。だって人の好きという思いは、なくすことも否定することもできないのだから。
 特におばあちゃんは私によく魚の煮付けを作ってくれた。酒としょうゆがしみこんでやわらかくなった身。甘く口の中でしみる温かさ。そして、母の作る海鮮丼。魚の脂身と甘く味付けされたしょうゆが、深く溶け合い口の中で合格の鐘を鳴らす。こんなものを食べて育っては、魚が嫌いになることなどあり得ない。
 そこで、もし世界が滅ぶならどうする? という質問があったとしよう。きっと「どこかに行きたい」「○○に会いたい」などの願いがあると思う。私はさまざまなものを食べたいと願うだろう。そして食べる感動を与えてくれたあの魚の煮付けと過ごしたい。