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北海道新聞に掲載されたNIE 関連の記事などを紹介します。

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ICTの活用法探る

 ICT(情報通信技術)の普及に伴い、学校教育現場でパソコンやタブレット、投影機などの活用が広がっている。ICT時代のNIEはどうあるべきか。新聞記事を使ったその実践例が昨年10月、札幌旭丘高校で行われた情報科の授業だった。担当した同校教諭で「コンピュータ利用教育学会」北海道支部長の高瀬敏樹さん(58)=NIEアドバイザー=と、北海道NIE推進協議会会長の高辻清敏さん(79)の2人に、ICT時代のNIEについて語り合ってもらった。授業の様子と対談の内容を紹介する。(司会は森田一志・NIE推進センター委員)

胆振東部地震テーマ 札幌旭丘高で授業*記事などパソコンに表示 校内向けSNSで発表も

災害時のICT活用を考えた札幌旭丘高の情報科の授業=2018年10月9日

災害時のICT活用を考えた札幌旭丘高の情報科の授業=2018年10月9日

胆振東部地震の際、札幌の中高生がSNSをきっかけに高齢者へ水を届けたことを報じた道新の記事

胆振東部地震の際、札幌の中高生がSNSをきっかけに高齢者へ水を届けたことを報じた道新の記事

 昨年9月6日の胆振東部地震は道内全域でブラックアウト(全電源喪失)を引き起こし、道民生活に混乱を招いた。この約1カ月後、札幌旭丘高校教諭の高瀬敏樹さんは、1年生を対象に災害時のICT(情報通信技術)活用を考える授業を行った。
 同校の選択必修科目「社会と情報」(2単位)で、デジタル社会の個人情報の保護や不正への安全対策などを学ぶ。今回の授業は、2コマ約90分。10月9日の授業には40人が参加した。
 授業は生徒人数分のパソコンが整備されたパソコン教室で実施した。高瀬さんは、胆振東部地震に関する新聞記事や写真、地図やデータを、パソコンで見せて説明しながら授業を進めた。
 重要だったのは胆振東部地震発生後の会員制交流サイト(SNS)に関する記事。「SNS 中高生の善意つなぐ」(北海道新聞朝刊昨年9月18日)は、地震直後に札幌市清田区のマンションの断水の際、高層階の高齢者に中高生が水を届けたきっかけがツイッターのつぶやきだったとする内容。このほかSNSのネガティブな側面を示す「『札幌全域で断水』ネットにデマ」(道新朝刊同9月7日)、「北海道 SNSでデマ拡散」(日本経済新聞朝刊同9月12日)なども取り上げた。
 その後10グループに分かれ、災害時のICT活用法について意見を出し合った。生徒が実名で投稿する校内向けSNSを使い、「確実な情報をお年寄りに会い伝える」「SNSで情報をむやみに流さない」「正しい情報かどうか確かめる」などの意見をグループ別にまとめ発表した。
 最後にワークシートに、授業で学んだ災害時のICTの活用法などを書き入れた。(森田一志)

札幌旭丘高校教諭 高瀬敏樹さん×北海道NIE推進協議会会長 高辻清敏さん*生徒が互いに評価し達成感/視覚・聴覚に訴え楽しく授業

 ――この授業の狙いは。

たかせ・としき 1960年生まれ。札幌旭丘高教諭で情報科を担当。同校新聞局顧問。日本新聞協会の「新聞活用の工夫 提案―NIEガイドブック高校編」を執筆。

たかせ・としき 1960年生まれ。札幌旭丘高教諭で情報科を担当。同校新聞局顧問。日本新聞協会の「新聞活用の工夫 提案―NIEガイドブック高校編」を執筆。

 高瀬 道新1面トップ記事「SNS 中高生の善意つなぐ」を生徒に読んでほしいと思ったのがきっかけ。SNSは不適切な投稿や炎上などネガティブな側面が目立つが、この記事は優れた活用例でしかも生徒に身近な内容。これとデマ拡散などSNSの問題点を報じた記事を素材に授業を組み立てた。災害時のICT活用法を考えてほしかった。関連する単元はメディアリテラシーがメインだが、情報モラルや助け合いなど道徳教育にもつながる。

 ――高辻さんはどう見ましたか。

 高辻 生徒が当事者意識を持てる優れた記事を生かし、深い学びができていた。問題をどう解決するかを考える生徒の探求力が優れていて協働学習もできた。アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)に慣れていて、生徒が自分たちで授業を作っていたと言える。

 ――NIEの授業にICTを活用する利点は。

 高瀬 生徒が記事を読んだ感想を端末に入力し、それを映し出して比較するのはよく行う手法。また校内向けSNSを使うと、生徒同士が互いの反応をすぐ知ることができる。紙に書かせると集約に手間と時間がかかる。また通常の授業では評価者は教師だけだが、生徒が互いに評価することで達成感を得ることが簡単になる。教師の一元的な見方ではなく、いろいろな見方で評価できる。

たかつじ・きよとし 1939年生まれ。札幌市立陵陽中校長を退職後、2001年にNIE推進協議会コーディネーターとなり、10年から会長。日本NIE学会理事。

たかつじ・きよとし 1939年生まれ。札幌市立陵陽中校長を退職後、2001年にNIE推進協議会コーディネーターとなり、10年から会長。日本NIE学会理事。

 高辻 NIEに限ったことではないが、視覚・聴覚に訴えることで分かりやすい指導ができる。子どもたちも楽しく学べ、子ども一人一人が授業に参加しやすくなる。教師にとっては板書の手間が減り、子どもと接する時間を増やせる。

 高瀬 また記事の鮮明度では電子データが優れている。タブレットやプロジェクターで記事をカラーで見せられる。授業の冒頭にその日の新聞でいいなと思った記事を見せることも可能。新聞を使いやすくなり、より多くの先生がNIEに取り組める。

 ――記事データベース(DB)の活用は。

 高瀬 私は根気がないので記事スクラップはなかなか続かないが、新聞社の記事DBを使うと効率よく探せる。近年のDBは切り抜きイメージで入手できるので、スマホでも簡単に電子的なスクラップを作り、そのまま生徒に見せられる。

 ――生徒に記事DBの活用法を教えていますか。

 高瀬 信頼できる情報源から、情報を効率よく収集する方法の一つとして教えている。まず自校の記事を探すのに最も適切なキーワードを選ぶことから始める。ほとんどの生徒が初めて使うが、すぐに有用性に気付く。

 高辻 学校現場でDBの活用が少ないのは宝の持ち腐れ。DBが使える学校で活用が少ない時は、近隣の使いたい学校が使えるようにする工夫も必要だ。

 高瀬 まず先生方に教材記事探しに使ってほしい。いろいろ使い道があるのが分かる。

 ――高辻さんが新聞を活用するようになったきっかけは。

 高辻 若い時の赴任地が地方の過疎地で、当時は教材も手に入らなかった。新聞は学校で購読していたのでスクラップができた。それから50年。自分のスクラップ帳は数百冊になった。

新学習指導要領のポイント ――高瀬さんは長く高校新聞の顧問もやっています。学校新聞の役割は。

 高瀬 主なものは三つ。学校内外に出来事を知らせる。記録として残す。学校コミュニティーの活性化。新聞制作ソフトを使うことで手軽に発行できる。

 ――NIEに取り組む学校として新聞にどんなことを載せてほしいですか。

 高辻 地域で活動している人や地域の課題を取り上げるのが最もよい。タンチョウ保護に取り組む人やアフリカの野球を支援する人が副読本などの教材になっているのはうれしい。北海道に即したテーマ、たとえば自然やアイヌ文化、観光と一次産業、過疎化などは社会科の教材として使いやすい。

 ――ICT活用の課題は。

 高瀬 学校の環境整備が第一。デジタル教科書を使うには生徒1人に1台のタブレットと教室の無線LAN環境が必要だが、予算の問題がある。教師が指導者用デジタル教科書を使いこなすのが第一歩になる。

 高辻 先生方はソフト面は勉強しているが、ハード面はまだまだだ。ICTが苦手な先生もいるが、詳しい地域の方から支援を受けられないか。ICTの活用で、子どもたちが生き生き楽しく学べる授業が期待できる。

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