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重要さ増すメディアリテラシー*ICT授業に取り組むDプロ公開研究会から*新聞作りで見る目養う

 学校教育でICT(情報通信技術)を使う取り組みが多くなっている。子どもたちの学習環境や生活環境は変わっていくが、メディアリテラシー(情報を読み取る力)を学ぶ必要性は変わらないどころか、「フェイクニュース」の増加でますます高まっている感もある。ICTを使った授業を研究する教諭らのデジタル表現研究会「D―project」(略称・Dプロ)の中川一史会長=放送大学教授、札幌市出身=は、情報を見る目を養う大切さを強調し、そのために新聞の活用や新聞作りも役立つと話す。(森田一志)

公開研究会で、新聞記事のワークシートを使った授業について発表する海道さん(左端)=3月24日

公開研究会で、新聞記事のワークシートを使った授業について発表する海道さん(左端)=3月24日

 Dプロの公開研究会が3月24日、京都市の同志社中学校・高校で開かれ、100人以上の教諭や大学関係者が参加した。その中で金沢市立田上小の海道朋美教諭が、新聞記事を活用した朝学習と、メディアリテラシーの授業について発表した。

 海道さんが使った教材は、新聞社などから無料で定期的に送信される、記事が載ったワークシート。5年生のクラス約30人に週1回の朝学習で、《1》興味ある記事のタイトル《2》5W1H《3》感想や意見―を短時間で書き込ませた。

 続いて朝学習を受けて行った国語の授業を説明。授業では教科書(光村図書)の単元「想像力のスイッチを入れよう」に沿ってメディアリテラシーを教えた。

 教科書では「メディアが事実の全てを伝えることはできない」と、子どもがニュースから事実を読み取る難しさを指摘しており、子どもが事実関係を的確にとらえるための四つの「スイッチ」が紹介されている。

 《1》情報が「事実かな、印象かな」
 《2》「他の見方はないかな」
 《3》メディアが伝えていない情報として「何が隠れているかな」
 《4》最後に結論を急がず「まだ分からないよね」

 海藤さんはこの四つを教えた後、ワークシートにあった「鳥インフルエンザ発生」や「アフガニスタンの自爆テロで90人以上死亡」の記事について再考させた。すると当初の「触りたくない」「怖い」という素朴で感覚的な感想から、子供たちの目線が変化し、爆弾テロの裏に宗教が関係するという推論も出てきた。海藤さんは「新しい情報の見方が広がった」と手応えを語った。

 学習指導要領によると、新聞読解は小学校高学年の国語で大切な言語活動と位置づけられる。中川さんは「現在の情報源は多岐にわたるが、メディアそれぞれの特徴を理解し、適切に選ぶ力を付けていくことが重要」とした上で、新聞は「本文、見出し、写真や図表などの関係を検討することで、言語能力や情報活用能力育成に寄与できる」と活用上の利点を話している。

中川一史

*Dプロの中川会長に聞く*自分の視点を持ち本物に迫る

 Dプロの中川一史会長にメディアリテラシーと新聞活用について聞いた。

 ――公開研究会では、新聞記事を教材に使った発表も行われました。ICTの研究会なのになぜでしょう。

 私たちはメディアで創造する力を育むために《1》リアルで必然性のある課題を設定する《2》好奇心や探求心、発想力、企画力を刺激する―など12の「着目要素」を提唱しています。このうち「本物に迫る目を養う」「自分なりの視点を持たせる」などの力を付けるために新聞は役立ちます。

 ――今回の海道先生の発表をどう見ましたか。

 発表で触れていた「四つのスイッチ」、つまり《1》情報を冷静に見直す《2》別の見方を促す《3》伝えていない情報を想像する《4》結論を急がない―をいつも意識させることで、新聞情報の見方、新聞記事の書き方を育てることに生かしています。
 せっかく新聞作りが題材として扱われているのに、文章を作ってオシマイという授業が少なくありません。どのような力をつけるのか。その意識化が教員側にも必要なのです。

 ――教育における新聞メディアの長所と役割を教えてください。

 新聞作りという表現活動は実にさまざまな学びの要素を含んでいるのです。「本文」「見出し」「写真や図表」という関係を検討することが、子どもの言語能力や情報活用能力の育成に寄与できることが大きい。
 しかし、時として新聞という形式が、学習活動の表現形式として合わない場面も出てきます。情報源として、今は新聞のほかテレビ、インターネット、図書館の本、隣のおばあちゃんの話など多岐にわたります。それらの特徴を理解し、適切に取捨選択する力を子どもたちにつけていくことこそ重要なのです。一つの媒体にこだわる必要はないと思っています。ICTとNIEに境界線はなく、私たちが行う新聞作りも、これがNIEという意識はありません。

 ――ICT活用で大切なことは。

 国語の教科書は昔に比べて情報活用単元が多くなりました。ただICT活用はあくまでも手段で、目的ではありません。教室でのICT環境整備が進んだ今、変わらずに子どもに寄り添いながら思考、判断、表現力の力を付けるよう活動したいと思っています。

 なかがわ・ひとし 札幌旭丘高校、横浜国立大学卒。横浜市内の小学校教諭、金沢大学助教授などを経て2009年から放送大学教授(メディア教育)。58歳。北海道新聞朝刊「週刊じぶん」で「スマホネイティブの親はたいへん」を連載中。

◇デジタル表現研究会「D―project」◇
 教師によるICTを活用した授業デザインを目指し、2002年に発足。ICT環境の整備などを研究、情報発信してきた。略称「Dプロ」。北海道、関東、関西など全国に11支部があり、各地でセミナーや研修会が開かれている。メーリングリスト利用者は約600人という。事務局は放送大学(千葉市)中川研究室。

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