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「新聞王国」生んだ編集論議*全道高校大会60年*生徒が司会や提言 紙面づくり急成長

 道内は高校新聞が全国でもトップクラスのレベルを誇り、「高校新聞王国」とも称される。それを支えてきたのが北海道高文連主催の全道高校新聞研究大会だ。誕生から約60年。今年の当番校、登別明日中等教育学校で開かれた第61回大会を訪れると、伝統の編集論議の中に生徒の高い自主性が息づいていた。(森田一志)

全道高校新聞研究大会の分科会で、新聞の役割などを討議する高校生ら=10月4日

 「高校生新聞は高校生の視野を広げる糸口」。「高校生新聞の役割と可能性を考える分科会」で、札幌啓成高2年の鈴木幹司さんは、提言者の一人として語った。スマートフォンと高校生のあり方を問う紙面を担当。生徒アンケート、大学の識者や家電量販店の声などを多角的に取材し、改めてスマホの負の側面を浮かび上がらせた。
 同じ提言者の名寄高1年の板垣慶子さんは、有機農業によるトマト農園の記事を書いたところ、記事を見て農園を訪れる人がいるなど「校外の反応が良かった。もっと地域を取材したい」と述べた。
 同分科会は約40人が編集の悩みや意義などを半日かけてグループ討議した。助言者として見守った旭川北高の鈴木修平教諭は「生徒目線で書かれる身近な話題に共感する。それは地域の力になる」と確信する。
 今大会は10月3~5日、開催され、全道57校の約400人が参加した。実行委の室蘭支部7校が運営し、「大会の華」とされる9分科会で編集技術の向上、校内生活、地域取材などテーマ別に意見交換をした。
 司会、提言は生徒に一任され、討議を通じて紙面作りのノウハウが蓄積される。各校の新聞も展示され、他校のライバル心も刺激する。編集マインドは大きく揺さぶられ、新聞づくりは急成長するという。
 今年の全国高校新聞コンクール(大東文化大主催)は入賞32校中、道内勢は5校。もう一つのコンクール、全国高校新聞年間紙面審査賞(高文連主催)では61校中、道内は13校を占めた。高文連新聞専門委員長の高瀬敏樹委員長(札幌旭丘高校教諭)は「新聞は学校の応援団。スポットライトを当て記録を残す立役者に」と飛躍を期待する。
 大会では分科会のほか、講演会や全道新聞コンクール入賞校の発表も行われる。
 10月下旬。札幌啓成高新聞局が発行したB4判の速報は、中旬にあった生徒会役員の選挙結果を報道していた。1人枠の副会長選に1年生2人が立候補し、投票結果は異例の436票の同票。その後、同票が尊重され2人とも当選となったことを「生徒の声通る環境目指す」の大見出しで迅速、的確に伝えた。
 この速報づくりに携わり、大会分科会で提言した鈴木さんは「これからは学校内のことをもっと地域にも伝えたい」と意気込む。これまで同大会での意見交換で学んだ新聞づくりの大きな収穫になったようだ。

*小樽桜陽高・菅原教諭に聞く*極めて高い自主性

道内高校新聞の特徴や歴史を話す菅原教諭

 道内の高校新聞の歴史に詳しい菅原淳さん(53)=小樽桜陽高教諭、北海道高文連新聞部専門委員=に、高校新聞の戦後の歩みや特徴などについて聞いた。

 ――道高文連新聞部が昨年、60周年を迎えました。どのようにして発足したのですか。

 道高文連新聞部ができる前に、既に生徒が1949年に結成した全道高校新聞連盟(道高新連)があり、全道大会も生徒の手で行われていました。ただ校長会から「組織や生徒の動きが分かりにくい」といった声があり、道高文連が56年、新聞・演劇・弁論の3専門部でスタートした際に、学校側が生徒の意見を規約で保障しつつ、活動が現在の高文連に受け継がれたのです。

 ――北海道の高校新聞の特徴は。

 全道大会は国内でも例をみない規模で開催され、充実した交流が各校に環流され、紙面は全国でもトップクラスと言っていいでしょう。大会参加数でみると、ピーク時の1960年代半ばの160~170校、約1200人には及びませんが、実行委は生徒に任されるなど、運営の自主性が極めて高いのです。

 ――なぜ、自主性が長く維持されてきたのですか。

 60年代後半から、学園紛争で全国の高校新聞は極端な論調になったり、新聞部がなくなったりしました。道内では当時1日開催の研究大会を、生徒が提言し「2日日程」にしようとして、混乱が続き一時的に分科会がなくなりました。それでも顧問の教諭が生徒の自主性を尊重する活動に力を入れ、大会で生徒の自主性が高まったわけです。

 ――全道大会は「分科会こそ大会の華」と言いますね。

 高校新聞は調査、情報の取捨選択など今で言うアクティブ・ラーニングを昔から実践してきました。だから大会もコンクール表彰がメインではなく、編集者がじっくり意見や交流する分科会こそがメインです。それが新しい高校新聞の伝統を築き上げていきます。

 すがわら・あつし 1964年生まれ。稚内高教諭を皮切りに函館東高(当時)、静内高を経て現在、小樽桜陽高で新聞局顧問も務める。高校新聞に携わって約30年。2008年から2年間、北大大学院で道内高校新聞の歴史を研究した。専門は漢文、国語。東京都出身。

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