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「羅生門」の世界 新聞で分析*札幌国際情報高*社会の理不尽 記事から探す*殺人、原発被災…討論し発表

 札幌国際情報高の高橋一嘉教諭(国語)は、文学作品の読解に新聞を活用している。芥川龍之介の小説「羅生門」では、主人公の「下人」が置かれた極限状況を自分たちの問題として考えるために、理不尽さを象徴する記事を探し、討論させた。また、年間を通してコラムや社説などの構造や内容を分析する練習を行う。「新聞を読めるような生徒を育てるのも国語教師の役割」と話す。(武藤理司)

高橋教諭(中央奥)の指導で、新聞をめくって理不尽な事例を探す生徒たち

高橋教諭(中央奥)の指導で、新聞をめくって理不尽な事例を探す生徒たち

 高橋教諭の担当は1年生3クラスの「国語総合」。「羅生門」の下人は平安時代、災害や飢饉(ききん)に見舞われた京都で、主人から一方的にひまを出される。盗人になるか、飢え死にするか―。生きるために老婆の着物をはぎ取り、闇に消えていく。
 授業は全12時間。1時間目に下人が直面する理不尽な状況を読み取り、続く3時間で新聞を使う。
 17日、図書室で行われた1組の授業。生徒40人が8月ひと月分の北海道新聞と全国紙計5紙から、理不尽な事例を取り上げた記事を探し、その事実を200字に要約した。高橋教諭は「まず見出しを読み、その裏にある理不尽さをくみ取るのが大事」と助言した。
 三上遼君は、三重県四日市市で空き地に捨てられ、遺体で見つかった女子中学生の記事を選んだ。「なぜ、彼女は見ず知らずの人に殺されなければならなかったのか。新聞でこの記事を探したことで、下人の味わった理不尽さを身に染みて感じることができた」と振り返る。
 この後の2時間は5人ずつの班に分かれて討論し、発表した。記事から読み取れる理不尽さを複数の視点で考え、問題の本質に近づくためだ。
 原発問題では、値上げした東京電力が原発事故被災者に十分な賠償をしていないことや、原発に反対する都会の住民が電気のある暮らしを享受していることなどが話し合われた。体罰教員の全国調査の記事では、教師側、生徒側双方の立場から意見を出し合った。
 高橋教諭は「新聞を媒介にして下人が向き合っている理不尽さを自分の生活に引きつけることで、表面的ではない、自分なりの読み方が可能になる。正解のない問題と向き合う勇気を持つことが彼らの成長につながる」と話す。
 同教諭はこれと並行して、自作のプリントを使い1面コラムなどの構造を分析する訓練を行う。週5時間のうち2回ほどで、冒頭の5~10分間を使う。
 17日は2組で、サクランボに戦争への思いを重ねた「卓上四季」(7月28日)などを題材としたプリント2枚を配布した。それぞれ「意見・感想」と「事実・具体例」を整理分類させ、五つの候補の中から見出しを選ばせた。
 新聞には一般記事やコラム、社説などがある。高橋教諭は「さまざまな種類の文章を読み取り、言葉を使う技術を学ばせるのに新聞は最適。討論などのコミュニケーションを通し、視点を変えて観察する力を磨き、批判的に意見をまとめて発表できる生徒を育てたい」と話す。

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