NIEニュース
北海道新聞に掲載されたNIE 関連の記事などを紹介します。

NIEのページ

Page of the NIE

道新と釧教大 NIE実践研究2年*生徒 社会に関心高まる*記事探し工夫*教科書との共通点生かす

 北海道新聞と道教育大釧路校のNIE共同研究が今月で終了する。2年間実践した釧路管内の中学校社会科教諭6人に調査したところ、全員が「生徒の社会への関心が高まった」と、手応えを感じている。課題となっていた教科書の進度に合う記事の探し方にも、それぞれが工夫や方向性を見いだした。全員が「今後も活用を継続する」と答えている。(舩木理依)

地理分野で、京都の歴史についての記事を使った林祐史教諭の授業=2月26日、釧路市立鳥取中

地理分野で、京都の歴史についての記事を使った林祐史教諭の授業=2月26日、釧路市立鳥取中

 調査は、本年度留萌管内へ異動した1人を除いて実施した。
 全員が記事を使ったのが地理分野で、公民分野が5人、2年目は歴史分野でも3人が取り入れた。活用の頻度は月1~4回となっている。
 初年度の経験を踏まえ、「記事に線や枠を描いたり、見出しに注目させた」(厚岸町立高知中・今野碧教諭)など、読みやすいよう工夫した人もいる。
 全員が生徒の変化を実感した。「ニュースを紹介すると、『知ってる』と答える生徒が増えた」と、釧路町立別保中の森田耕平教諭は言う。
 同町立富原中の細野歩教諭は「本年度教えた3年生の担任から『受験の模擬面接で、生徒たちが興味のあるニュースについてきちんと話している。NIEの効果は大きい』と声をかけてもらった」。
 ただ、標茶町立阿歴内中の樋口達也教諭が挙げた「授業の進度や狙いに合った記事を見つけ出すのは難しい」という課題は、全員が感じている。そこで、釧路市立鳥取中の林祐史教諭は「記事と教科書の内容との共通点を生かし、どんな単元でも使える工夫」の必要性を指摘した。
 一方、釧路市立春採中の池田泰弘教諭は「教科書の内容を裏付ける具体例として生徒に紹介した時こそ、記事の持つ説得力が発揮される。活用頻度を増やすより、教科書と一致した話題を選び抜いて使いたい」としており、それぞれが自分なりの活用法を見いだしたようだ。

*藤本将人 道教育大釧路校准教授*教師に新聞 読む意識*「活用4類型」教える指針に

藤本将人 道教育大釧路校准教授

藤本将人 道教育大釧路校准教授

 共同研究の中心となった藤本将人・道教育大釧路校准教授に、成果と提言を寄せてもらった。

 中学校社会科の教科書には、新聞を用いた授業が例示されてはいる。しかし、教育現場にNIEが浸透しきっているわけではない。
 原因の一つに、新聞を購読する家庭が減ったことが挙げられる。記事に触れる機会が少なくなった生徒には「読みの訓練」が必要だが、学習指導要領でその時間が確保されているわけではない。
 生徒の理解を助けるために設定したのが、研究の基盤である「新聞活用の4類型」だ。
 あらためて紹介すると、《1》一つの記事を読み、書かれた事実を確認する《2》一つの記事を読み、書かれた事実を読み解き、解釈する《3》複数の記事を読み、書かれた事実を比較する《4》複数の記事を読み、書かれた情報を必要に応じて分類し直し、自らの主張の根拠とする―という内容である。
 研究では、類型を取り入れる前提として、やはり「読みの訓練」が必要であることが分かった。まずは見出しを追って記事の意図を把握するといった、新聞の表現形式を理解させるのは必須であり、結果的には授業の効率化につながる。
 類型は、NIEの経験がない教師にとって、授業の指標にもなったようだ。
 教科書は見開き1ページで1時間の授業ができるよう作られている。記事を取り込めば情報量が増え、教科書の内容を削らざるを得ない。そこで教諭らは類型を基に、授業の構成や情報を選んだ。
 研究を経て何よりも変わったのは、教師に新聞を読み続ける意識が根付いた点だろう。
 教職4年目の細野歩教諭は、デジタル世代。一昨年は「平和主義」を扱った授業で類型《2》を取り入れた。
 生徒の持つ「平和」の概念は、漠然としている。そこで、南スーダンへ派遣された陸自北部方面隊が、平和維持活動のため道路整備などを行う様子を記事から伝えた。
 他国へ干渉しないことが平和の維持につながるのか、それとも干渉することが効果的なのか。人々の行動を追うことで、多様な「平和」像を生徒に気づかせることができた。
 「漠然としたイメージで社会を捉えていた生徒たちの姿は、かつての自分と同じ」と細野教諭は言う。持続的に記事を吟味し、何度も読むことにより、細野教諭自身がさまざまな論調に出合った。更新が激しく、過去の情報が常に塗り替えられていくインターネットのような媒体では困難だったろう。
 新聞活用を学びの一つの型として身につければ、教師自身も自己と社会を結ぶ像を絶えず描くことができるようになる。それは、生徒が市民生活を過ごす上での学力を育て、教師にとっては授業づくりの核になっていくに違いない。

*標茶・阿歴内中 樋口達也教諭*授業づくりで学び合い

標茶・阿歴内中 樋口達也教諭

標茶・阿歴内中 樋口達也教諭

 生徒が記事を読むだけでも「NIE」なら、毎日実践したと言えるかもしれません。ホームルームでは、ニュースの感想を発表する活動を続けており、私も必ずコメントします。
 社会への関心を育てるには、やはり授業に取り込む必要がある。ただ、構想を練る時間がもっと欲しかった、というのが正直なところです。
 私はへき地の小規模校に勤務し、通勤に片道40分かかります。校内の仕事のほか、校外の研究組織での業務もあった。他の実践教諭も部活の顧問などをしています。個々でNIEに挑戦していたら、もっと悩んだでしょう。全員で相談し、授業づくりをできたのが、研究の成果だと思います。
 昨年末には、教職3年目の今野碧先生が作った地理分野「北アメリカ」の案を基に、私が授業を行い、見てもらいました。質問に対する生徒の答えや、記事を読むのにかかる時間などを参考にしてもらえたようです。
 教職4年目の細野歩先生とともに、若手2人の成長には目を見張りました。授業の流れが良くなり、自信もついたのではないでしょうか。個人の努力と、学び合いの成果でしょう。
 40代の私には、20代の若い先生の発想や考え方は新鮮で、とても参考になりました。全員が初めて取り組んだからこそ、対等に意見を交わせた。“学びの場”の確保は重要でした。
 一方、社会への関心が高まっても、それはテストの点数では測れないのではないでしょうか。NIEを総合的な学力向上へと結びつけるには、長期的な展望を持った取り組みが必要だと感じています。(談)

ページ上部へ