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「名人」取材 視野広がる*聞き書き甲子園 道内5人出場*達成感大、文章力も向上

 林業家や漁師など、森や海、川の仕事に関わるベテランの話を、高校生が半年かけて取材しまとめる「聞き書き甲子園」(同実行委員会主催)。本年度道内からは5人が出場、今月初旬の締め切りを経て、3月に東京で開かれる成果発表会を待つ。参加した生徒が達成感を得るのはもちろん、教師や保護者からも「コミュニケーション力や文章力が向上した」など、成長を喜ぶ声が寄せられている。(舩木理依)

炭焼き窯は落田さん(左)の手作り。熱心に話に聞き入る豊岡さん(中央)と小山教諭

炭焼き窯は落田さん(左)の手作り。熱心に話に聞き入る豊岡さん(中央)と小山教諭

 「煙が青く変わったら窯に空気を入れるの。炭のよしあしは温度で決まるんだ。気候によって200度は変わる。勘が大事だね」
 留萌管内小平町で製炭業を営む「森の名人」、落田勝幸さん(77)の話に聞き入るのは、旭川農業高森林科学科2年の豊岡祐将さんだ。
 「樺太生まれだそうですが、思い出はありますか」「製炭業を継いだ理由は何ですか」。緊張しながら質問する豊岡さん。落田さんの丁寧な答えに、少しずつ相づちを打つようになり、4時間近い取材が終わるころには、表情も和らいでいた。
 「聞き書き甲子園」は、2002年に国土緑化推進機構など7団体で組織する実行委がスタートさせた。同機構などが全国から選ぶ「森の名人」「海・川の名人」約100人に、高校生が一対一で取材し、仕上げた原稿を作品集として発行している。
 生徒の作業は夏休みに始まる。東京で3泊4日の研修に参加、取材の方法や文章の書き方を学ぶ。「名人」との組み合わせが発表されると12月末までに取材を終え、録音データを全て書き起こしたあと、1月初旬には語り口調で書いた5千~6千字の原稿を提出する。3月の発表会では、優秀作数点も選ばれる。
 当初は、若い世代が昔ながらの仕事を知り、記録を残すことが目的だった。しかし「年齢の離れた人との交流で生徒の視野が広がり、達成感を得られる点が注目されるようになってきた」と実行委事務局の森山紗也子さんは言う。
 保護者や指導教諭への事後調査でも、「物事を多面的に見るようになり、積極性が増した」「考えながら文章を書く努力をするようになった」などの声が寄せられている。
 木材加工会社への就職を希望する豊岡さんは、農業高などが所属する北北海道学校農業クラブ連盟の意見発表会で、本年度最優秀賞を受賞している。「表現力に磨きをかけ、木材に関する知識も増やせるはず」と考えた小山靖之教諭から今回の参加を勧められ、指導も受けた。
 だが「聞き書き」は難しかった。質問を考えるためには、まず炭焼きについての情報収集が必要。取材後は休日も登校して録音データを1万字に書き起こし、1週間かけて5千字の原稿を仕上げた。
 「書き出しはどうするのか、どの情報をどんな順番でまとめるのか、かなり悩んだ。話の内容も濃く、自分の経験や思いを表現する意見文とは全く違った」と豊岡さんは振り返る。
 鉄のように黒光りする落田さんの炭の美しさが、目に焼き付いている。「勘で高品質の炭を作り続けることがすごい。あの技術とともに、絶対に残さなくちゃいけない」と表情を引き締めた。

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