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秋田で全国大会(2の2)*EPAめぐる本紙と神戸新聞の社説*読み比べて視点に幅*公開授業*生徒、理解深める

 7月に秋田市内で開催された第20回NIE秋田大会で、北海道新聞と神戸新聞の社説を比較する公開授業があった。授業を行った秋田県立秋田南高校の腰山潤教諭(国語担当)は地方紙の社説を活用することについて、「地域事情など立場の違いを認識すると、異なる主張への理解が深まる」と指摘する。(渡辺多美江)

日豪EPAに関する北海道新聞の社説(社説A)の論点を書き出しながら授業を進める腰山潤教諭(左端)

日豪EPAに関する北海道新聞の社説(社説A)の論点を書き出しながら授業を進める腰山潤教諭(左端)

 教材に使ったのは、日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)の大筋合意を取り上げた2014年4月8日の北海道新聞の社説(社説A)と、4月9日の神戸新聞の社説(社説B)。秋田南高の1年生40人が読み比べた。
 腰山教諭は地理歴史・公民科担当の岩川克敏教諭とともに生徒の意見を事前に拾い、両者の違いや共通点を洗い出したうえで、「Aは、EPAが畜産業の弱体化につながりかねないと主張」「Bは、自由化を逆手にとった攻めの農業戦略を訴える」と特徴を授業の冒頭で説明した。
 続く討議。生徒たちは、Aについては「合意は重要5農産物を守るとした国会決議に違反する―という指摘は重要」「批判ばかりで具体的対策がない」などと指摘する。Bに対しては「交渉が少しでも前に向かうように書いていて好感が持てる」「攻めの農業とあるが、具体策は書いていない」などとの見方だ。
 「AかBか」の対立モードの議論が、教師の助言やグループ討議、全体討議を経て変わっていく。
 「Aは農家の視点、Bは消費者の目線が入っている」「北海道は農産物の国内需要が大きくダメージも大きい。神戸の牛肉は世界需要があるので前向きになる」と視線に幅が出る。さらに、「AもBも読む人の視点を意識している」「同じ事柄でも、取り上げる情報によって内容が変わる」と双方の立場を理解する方向に発展する。最終盤、男子生徒の一人が「社説は地域や読む人が置かれている状況によって判断が違ってくる」と話すと、納得の表情が生徒の間に広がった。秋田も農業県で、発言した男子生徒の家は農家。
 腰山教諭は「北海道と神戸の抱える背景の違いを分かったうえで社説を読むと、それぞれの事情が理解できる」とまとめ、「君たちは2年後に参政権を得る。情報を取り入れて社会事象を批判的な目で分析することは大切だ」と話した。
 授業後、大会参加の教師を交えた検討会では「ローカル紙の社説を教材に使うのは面白い。EPAの場合、全国紙の比較だと論点がぼけたかもしれない」「生徒の考えの深まりが伝わり、刺激的な授業だった」との声が上がった。
 腰山教諭は「ネット検索で社説を選んだが、北海道新聞の社説は確実に使うつもりだった」と話す。地域の切実な状況が伝わるからだ。「授業は教材の力、教材選びで決まる」と考え、「新聞は生徒の目の前で展開される社会参加の生きた教材だ」と新聞の力をあらためて強調する。

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