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小中学校 次期学習指導要領*新聞活用 より明確に*国語・社会から全教科に拡大

 文部科学省が3月31日に告示した小中学校の次期学習指導要領に「社会に開かれた教育課程」などの考え方が盛り込まれた。趣旨は教育に新聞を活用する「NIE」の方向性に合致している。次代の学校教育と新聞とのかかわりを考える。(渡辺多美江)

 NIE関係者の間で最も注目されたのは、小中学校とも、教科全体の理念を表す総則に「新聞」の記述が初めて盛り込まれた点だ=表=。改定の大きな柱である「主体的・対話的で深い学びの実現」に向け、情報活用能力の育成を図るための教材・教具として新聞が加えられた。さらに、個々の児童・生徒の発達に応じた指導の充実のために新聞を活用するとしている。
 現行の学習指導要領で、新聞の記述は小中学校の国語と社会科の項にある。改定では「配慮するもの」と総則にうたわれ、教科の項に「新聞」の記述がなくても、全教科で新聞の活用が位置づけられたことになる。
 日本新聞協会の関口修司NIEコーディネーターは「総則に盛り込まれたということはそれだけ重きを置かれているからだ。この意味は大きい」と説明する。
 文科省は文部科学広報の3月号で、改定の狙いを「複雑で予測困難な社会の変化に主体的に向き合って生きる力を育てること」と解説する。「何を理解し、何ができるか」という知識、技能の資質・能力とともに、これらを踏まえて「未知の状況でも何ができるようになるか」につながる思考力、判断力、表現力などを育てることを強調しているのが大きな特徴だ。
 「社会に開かれた教育課程」「深い学び」はこうした狙いを支えるキーワードだ。また、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力をすべての学習の基盤に据えている。
 各教科の記述にもこの精神が反映されている。
 国語では小学校5、6年で、学校図書館などで複数の本や新聞を活用して調べることが言語活動として例示されている。中学校の国語でも、2年では本や新聞、インターネットの情報を出典を明らかにしながら活用すること、3年では「論説や報道などの文章」の読み比べが例に挙げられた。一つの文章の意味を読み解くだけでなく、複数の情報から適切な内容を選び取って自分の考えをまとめる作業が重視されている。
 社会科では、小学校5年で産業と情報の記述が現行より詳しくなった。身に付けるべき知識、技能として、映像や新聞などの各種資料で調べることが新たに加わった。同様に「思考力、判断力、表現力など」の項では、放送や新聞などのメディアの機能・役割への着目を求めている。
 真偽の入り交じる多くの情報があふれ、インターネット依存症が問題化する現代社会に対応しようとの意図がくみ取れる。関口氏は「現代の社会的事象を多面的、多角的に考察することがうたわれている。新聞記事は教科書を支える主たる教材となる」とみる。
 今後、指導要領の各種解説書が夏から秋にかけて出版される運びで、学校現場での研究が本格化する。

 次期学習指導要領の中の「新聞」にかかわる主な記述

主体的に読み思考力育成*朝倉一民(かずひと)・NIEアドバイザー(札幌市立屯田北小教諭)

朝倉一民(かずひと) 今回の指導要領改定について、教師の関心は非常に高い。「主体的、対話的で深い学びの実現」など、今までにない大きな変化を要求されていると受け止めているからだ。たとえば、昔ながらの「一斉授業」スタイルは変わることになるだろう。では、どう教えるのかと教師たちが問題意識を持ち、学校内外で各種研修が行われている。
 次期学習指導要領では、これまでの「知識・技能」の伝達に加え、未知の状況を切り開く「思考力、判断力、表現力等」の育成を掲げている。インターネットやテレビなどの動画情報は目と耳からの刺激が強すぎて、脳の働きは受け身になる。新聞は本人のペースで読むことができるので思考が活性化する。変化し続ける社会状況を踏まえ、教科書を補完する教材として、新聞の重要性は高まった。NIEにとって追い風だと思う。
 一方で新聞を購読する保護者や教師は減っており、以前のような「新聞が手に入って当然」のような活動は難しい。それでも、ネットでは探せないさまざまな社会の景色を感じるために、新聞の重要性は消えない。教材研究の一環として教師が新聞を扱ったり、新聞社のデータベースを活用することが重要ではないか。


多様な情報から選ぶ力を*幸坂健太郎・北海道教育大札幌校講師(国語教育分野)

幸坂健太郎 次期学習指導要領では、児童・生徒が将来に必要な力を「資質・能力」と初めて位置づけた。だれも予測できない未来でもしたたかに生きる「教科横断型の力」の育成が掲げられ、歓迎したい。そのための教育内容を「知識・技能」「思考力、判断力、表現力」などの大きな柱に再編した。
 「知識あってこそ思考力が育つ」という考えで、これも「論理的思考力の育成」が専門テーマの私にとって追い風だ。
 私の研究は、複数のメディアから情報を集め、それをうのみにせず適切に批判精神をもって判断して自分の考えを発信する力を育てることだ。今の子供たちはネット情報の影響からか、多くの情報を「自分に関係ない他人事(たにんごと)」ととらえる傾向にあり、気がかりだ。新聞は多様な情報が視野に入るので、「自分にとってよけいな情報だと思ったが役に立った」という経験をさせるのに適している。たとえば、目当ての新聞記事そのものを切り取るのでなく、掲載面全体を見せるのも効果的ではないか。
 新聞は子供たちにとって遠い存在だ。その上で、新聞に触れる機会をつくるのも教師の役目だし、新聞を含めてどんな時にどんなメディアが役立つかの判断力を育てることが重要だ。


◇学習指導要領◇
 児童・生徒に教えなくてはならない最低限の学習内容などを示した教育課程の基準で約10年ごとに改定される。教科書作成や内容周知のため告示から全面実施まで3~4年程度の移行期間がある。現行指導要領は2008年に改定され学力低下批判に対応して授業時間数を約40年ぶりに増やした。小学校が11年度、中学校が12年度、高校が13年度から全面実施されている。15年3月の一部改定では道徳の教科化が決まり、小学校は18年度、中学校は19年度から実施される。今回改定の次期学習指導要領の全面実施は小学校が20年度、中学校が21年度。

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