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北海道新聞に掲載されたNIE 関連の記事などを紹介します。

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第3回北海道セミナー*子どもの力 どう伸ばす

 19日、札幌市中央区の北海道新聞本社で開かれた第3回NIE北海道セミナー(北海道NIE推進協議会主催)には道内の教師ら約50人が参加し、現在の学校教育の課題に即した二つの講演を通じ、子どもの力を伸ばすNIEの在り方を考えた。道徳教育が専門の林泰成・上越教育大学副学長(58)は、2018年度から小学校で、19年度から中学校で道徳が教科化されることを念頭に「道徳教科化の中でのNIEの可能性」と題し講演した。札幌の中学校で国語を教えた経験がある安藤修平・元富山大学教授(80)は「現代っ子の脳を育てるNIE」をテーマに、今どきの子どもにどう向き合うべきかを語った。講演の内容を紹介する。(小田島玲、萩原琢詩)

子どもの力を伸ばすNIEの在り方を学ぶ参加者

子どもの力を伸ばすNIEの在り方を学ぶ参加者

*上越教育大副学長 林泰成さん*道徳教科化「討論型」に期待

上越教育大副学長 林泰成さん 道徳の教科化というと「修身教育の復活」と言われる場合もあるが、そんな単純な話ではない。前提として学校教育の変化がある。昔は教科書に書かれたことをペーパー上に再現するのが学力だったが、今は学力の概念に人間性や協調性、道徳性が入り込んできた。評価方法でも、ペーパーテストだけでなく理解したことを人に伝える能力を評価するようになっている。これらが教科化の背景だ。
 私は以前、学会で道徳の教科化に「反対」と発言したこともあるが、今回の教科化は面白いと思った。その時には思ってもいなかった「考え、議論する道徳」という方向へ進んできたからだ。例えば新しい学習指導要領には、NIEとも関連する「問題解決的な学習を適切に取り入れること」と示された。
 問題解決的な学習とは何か。日本の道徳教育で、大切なのは道徳的価値を教えることと考えられてきた。例えば友情とは、思いやりとはどういうことかなどだ。だが、世界には道徳的価値を教えない教育があり、米国の心理学者、コールバーグが提案したモラルジレンマ授業もその一つだ。
 モラルジレンマ授業とは、二つの選択肢のどちらを選んでいいか悩むような教材を基にした討論型の授業だ。コールバーグが使った例では、ある人が病気で亡くなりそうな妻のために特効薬を買おうとしたが高価で買えず、薬屋は値引きも後払いも認めない。この人は夜、薬を盗みに入った。この行動に賛成か反対か。
 コールバーグによると、賛否どちらを選ぶかではなく、どういう理由付けをするかが重要だ。悩むことで考え方の構造が変わり、道徳性が発達するという。道徳的判断の訓練が狙いだ。
 さてNIEの話に入る。道徳科で教科書以外の教材が使えるのか。教科書は法的な使用義務があり使わなくてはいけないが、学習指導要領に「多様な教材の活用に努めること」「充実した教材の開発や活用を行うこと」とある。教科書の内容と関連した新聞記事を使うのは可能だ。
 例を挙げると、第14回NIEオホーツク地区・網走セミナー(昨年6月22日、網走市立白鳥台小)で使った「駆除されるエゾシカ」と「保護されるニホンザリガニ」の記事なら、モラルジレンマ授業を展開でき、教科書の「生命尊重」と連動させて十分使える。
 最後に記事の活用による可能性を話したい。記事は作り事ではない現実の問題を取り上げているので、子どもたちが自分の事として考えやすくなる。
 また記事は現在進行形の問題を扱うので、自分で考え仲間と議論することに向いている。教科書は完成するまで時間がかかる。情報モラルの問題で言えば、会員制交流サイト(SNS)などは教科書に入れようとしても時代遅れになる。
 「考え、議論する道徳」への転換として教科の道徳が始まる。教科書の縛りがあるにせよ、新聞教材などを使った討論型授業は今後も大きな期待が持てる。

 はやし・やすなり 1959年、福井県生まれ。同志社大大学院博士課程を経て、上越教育大助教授、同大付属小校長などを歴任し、現在、同大副学長・大学院教授。専門は道徳教育、分析哲学など。新潟県上越市在住。

*元富山大教授 安藤修平さん*「言語不得意型」にも対応を

元富山大教授 安藤修平さん 教育に携わる私たちの仕事は、一人一人の子どもの未来に橋を架けることだ。実践なくして橋を架けることはあり得ない。実践とは「全ての子どもの事実」から考え、悩み、試み、その都度「全ての子どもの反応」を確かめ、「全ての子どもへの次の手」を編み出すことだ。
 教育の実践のポイントは、対象である子どもたちをどう認識するかだ。NIEについても、今どきの子どもたちをどう認識するかからスタートしてほしい。
 私は今どきの子どもたちを《1》教師の働きかけに一生懸命応える子《2》授業開始5~7分で目が遠くなる子《3》椅子から床に移動し横たわり続ける子《4》大声を上げたり突然キレる攻撃的な子―の4種に分け、《1》をA群、《2》《3》《4》をB群とした。
 A群の子は言語情報処理優先脳を持つ「言語得意タイプ」で、論理的思考ができる。だから、ほとんどが言語で行われる学校教育のやり方に合っている。ところが、B群の子は論理的思考が苦手な「言語不得意タイプ」で、先生の話す言語を受け取りにくい。
 これまではA群に対応した学習活動が組まれ、評価がされてきた。だから、B群の子は活躍できなかった。B群を意識した方法も開発すれば、その子たちも活躍できる。A群もB群も共に学び合う、B群にも合った授業を創りあげることがNIEにおいても急務だ。
 B群の子を生かすにはどうすればよいか。
 B群の子は論理的思考が苦手な一方、一つの映像や写真の中にあるたくさんの情報を一瞬にして処理できる大量イメージ処理優先脳を持っている。「映像得意タイプ」だ。
 だから、NIEでやる二つの記事を比較したり分析したりみたいなことは論理的思考が求められるので得意ではないが、新聞の写真や広告には反応する。写真を用い、そこから文章に持っていき、また写真に返って文章に返るといった方法の開発が必要ではないか。すぐに文章を比較したり分析することは不得意だから、その前に写真や記事を集めたりする活動から入る方が取り組みやすい。
 グループでの話し合いも不得意だ。「何かありませんか」と言うと、A群の子がしゃべって終わってしまう。B群の出番がない。新たな方法の開発が必要になる。
 私は「人工知能(AI)時代」にすでに入ったと考えている。NIEもAI時代を視野に入れた指導でなければならない。AI時代の学校や家庭で必要なのは、自らの実体験に基づいて想像力を働かせ、未知の世界をより深くイメージできる力だ。
 さまざまな工夫をしてNIEの実践例を増やすべきだ。その際、B群の子どもたちを意識した実践を試みてほしい。それを繰り返すことで「全ての子」への指導となる。そして、NIEの学習の中にAI時代に向けた要素を加えていってほしい。今からタネをまいておかなければ、気付いたときにはもう遅い。

 あんどう・しゅうへい 1937年、札幌生まれ。道学芸大(現道教大)札幌分校卒。札幌の中学校教諭などを経て、文部省初等中等教育局主任教科書調査官・同視学官、富山大教育学部教授などを歴任。専門は国語教育。札幌在住。

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